倫理

総評と分析

2~3行の4つの選択肢から正解を1つ選ぶオーソドックスな設問形式がメインだったが、内容面ではかなり細かい知識まで問われた。


形式面では昨年度は見られなかった3か所の空欄補充問題が復活したほか、3つの文すべてを正誤判定する問題が1題増加した。内容面では現代社会、近代英米哲学からの出題が散見されたほか、普段の学習でメインとして扱われることの少ない人物や、頻出人物であってもやや珍しい事項が問われた。

問題分析

大問数 大問数は昨年度と同じ4。
設問数 設問数は昨年度から1増えて37。
解答数 解答数は昨年度から1増えて37。

問題量

  • 全体の分量としては昨年度並み。

出題分野・出題内容

  • 第1問(現代社会・青年期・心理学など)、第2問(東西源流思想)、第3問(日本思想)、第4問(西洋近現代思想)という構成に変化はない。
  • 特に第1問や第4問で、現代社会への関心や20世紀後半の英米哲学分野を意識した問題が散見された。また人文主義など盲点的事項の正確な理解まで問われた。
  • 資料問題では、第1問では昨年度のヒポクラテスに続き医療や看護に関連するネル・ノディングズによるケアの理念が、第3問では哲学者の久松真一、第4問ではドイツの社会哲学者ホネットが出題され、資料問題の近現代的傾向が強まった。またノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイも出題された。
  • 第3問では鈴木正三、西川如見、徳富蘇峰などが出題され、従来よりもかなり細かい出題が目立った。また第4問のJ・S・ミルについてはベンサムとの快楽の質に関する対比でなく、内的制裁の重視が出題された。

出題形式

  • 昨年度同様8択問題はなかった。一部の6択問題などを除いて増加傾向にあったオーソドックスな4択問題が1題減った。なお、提示された2~3つの文の正誤を判定して組み合わせる問題は、昨年度の1題から1題増えて2題になった。

難易度(全体)

  • 全体としてやや易化。易しい問題もあったものの、複数の文の正誤判定をする問題や、人名や語句の組合せ問題が微増した。普段の学習であまり取り上げられない細かい知識や、盲点になりがちな基本的用語の正しい理解も求められた。

第1問 (28点満点)

配点 出題内容 難易度
28 現代社会の諸問題~ロボットと仕事、「友達」のあり方について やや難

ロボットと人間、友達のあり方をめぐる高校生同士の会話を題材に、現代社会や現代思想の分野から主に出題された。問1では普段の学習で馴染みの薄いクワインが出題されたが、文脈と消去法で解答可能。問2は例年1題出題される図表読解問題だが、グラフ項目の文章量が多い。問3ではリバタリアニズムを代表する哲学者ノージックが出題。問4は資料読解問題で、引用はネル・ノディングズ『ケアリング』から。問5~7はやや一般常識的な題材だが、問8の「UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)」や「JICA(国際協力機構)」の内容の正誤判定は倫理受験者には細かい。またマララ・ユスフザイなど現代分野からの出題があった一方、頻出であるフロイトやエリクソンなどは扱われなかった。

第2問 (24点満点)

配点 出題内容 難易度
24 東西の源流思想~旅と人生 標準

旅と人生というテーマを扱った本文を題材に、東西の源流思想分野から総合的に出題された。問1の正解であるアリストテレス「中庸」の例は有名だが他の誤答もやや紛らわしい。問2のプラトンに関しては、イデア論ではなく魂の三分説で馬と御者が登場するため、学習が甘いと迷ってしまうような出題。問3の大乗・上座部仏教については経典の名前など細かく発展的。問4の諸子百家はオーソドックスな問題。問5は、ブッダが悟ったのは苦行の実践という段階を経てのことであるため、誤答であるが迷った受験生もいた可能性がある。問6はキリスト教の基本的問題。問7は、六信五行についての正確な知識があれば解答可能。6択問題だが配点は2点。問8はトマス・アクィナスの『神学大全』から出題された易しめの資料読解問題。

第3問 (24点満点)

配点 出題内容 難易度
24 日本思想史~「武士道」と「茶道」にみる日本の伝統 やや難

「武士道」と「茶道」を通じて日本の伝統を考察する本文を題材に、古代から近現代までの日本思想が幅広く出題された。問1は源信と空也の違いだけでなく通称まで明確でないと解答できない。昨年に引き続き出題された問2の美意識についても問われる知識が細かく、古文や日本史の知識を手がかりにした受験生もいただろう。問3は日本の古代思想に関する出題だが、慎重な検討が必要。問4と問6の山鹿素行と徳富蘇峰、また特に問5の鈴木正三と西川如見などは、盲点になりがちな人物。問7は空欄3か所の出題形式が復活。東洋のルソーと呼ばれた中江兆民の出題のため両者の知識を必要とする。幸徳秋水が社会主義者であるためやや紛らわしかったかもしれない。問7は現代の哲学者久松真一の『茶道の哲学』からの引用で読みやすく易しめの資料読解問題。

第4問 (24点満点)

配点 出題内容 難易度
24 西洋近現代思想史~生の謳歌 標準

「生の謳歌」をめぐる思索について述べられた本文を題材に、西洋近現代思想史分野から総合的に出題された。問1は「人文主義」について問われ、思想史全体の流れを抑えた学習ができていないと面食らったかもしれない。問2の社会契約論者については誤答が極端で易しめ。問3は頻出のデカルトやスピノザから標準的な出題。問4、カントとヘーゲルの対立は知っていても問われた用語は馴染みがなく難しかったと思われる。6択だが配点は2点。問5のJ・S・ミルについては頻出である快楽の質だけでなく内的制裁の重視も知っている必要があった。問6はコントの「実証主義」について、定番の「3段階」の説明がない形で出題されやや難。問7のニーチェは標準的。問8は独哲学者ホネットの「承認をめぐる闘争」からの資料読解問題で、やや易しかった。

大学入試センター試験平均点(過去5年分)

年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度 2015年度
平均点 62.25点 67.78点 54.66点 51.84点 53.39点
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