世界史B
総評と分析
※前年との比較は、2021年度大学入学共通テスト(1/16・17実施)との比較です。
知識問題と読解問題がくっきりと分かれていて、それを区別して上手く頭を切り替えながら解くことが求められた。
前年同様に史資料問題が豊富に掲載された。前年は知識で解く要素と史資料を読解して解く要素を混ぜる形の問題が見られたが、今年は知識問題と読解問題がはっきりと分かれていた。そのため、個々の問題がどちらなのかを見極めて、上手く頭を切り替えながら解くことが求められた。
問題分析
大問数 | 5で前年から変更なし。 |
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設問数 | 34で前年から変更なし。 |
解答数 | 34で前年から変更なし。 |
問題量
- 前年と同じで史資料問題が多いが、読解に要する時間がやや減少した。
出題分野・出題内容
- 西洋史・東洋史という観点では、東洋史が多く、特に西アジアや東南アジアといった東アジア以外からの出題が増加した。オセアニアから3問出題されていたのも目立つ。
- 時代別では、近代史に偏っていた前年と比較するとバランス良く出題されていたが、古代史は引き続き少なかった。
- 分野別では、政治史が多く、社会経済史・文化史がやや少なかった。
出題形式
- 史資料問題が多かったが、ほぼ読まなくても解ける実質的な知識問題と、熟読を要するものが混在していた点が今年の特徴である。
- 地図問題が大きく増加した。
- 試行調査や前年は多かった文や空欄補充の組合せ問題が減少し、センター試験でよく見られた4択の正誤文判定問題が増加した。
- 時系列を並び替える問題は出題されなかった。
- 表やグラフを使った問題は減少した。
難易度(全体)
- 昨年と同程度。要求する知識水準がやや上昇したが、読解に時間のかかる問題が減少した。東南アジア史やオセアニア史の習熟度によって個々人の感触が大きく異なったと思われる。
第1問 (27点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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A | 9 | シーボルトの東アジア研究 | 標準 |
B | 9 | 9世紀のイラン系知識人の伝記 | 標準 |
C | 9 | 王国維の周辺民族観 | やや難 |
世界史上の知識人や学者を題材として、関連する事項が問われた。注目すべき問題は問1と問9。問1は選択肢がいずれも正しい内容であるが、「下線部の学問のいずれかに対応する」という条件で正解を選ぶ。問9はいの文の判断に悩むと思われるが、パスパ文字で書かれたフビライの命令文書ということはモンゴル語であるので「別の民族や集団が残した記録」とは言えない。その他では、問5は正解の選択肢がやや難しいが消去法でも解答可能。問7は『金史』から空欄エに「女真」が入るとわかれば正解を導ける。
第2問 (15点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 6 | チャーチル『偉大な同時代人たち』 | 標準 |
B | 9 | ケネディ「平和のための戦略」演説 | 標準 |
当事者などによる記録がテーマとされ、Aでは近代欧米史、Bでは戦後史が問われた。Aは読み取り・問われた内容ともに容易であった。Bではケネディの名は伏せられており、資料などからキューバ危機・部分的核実験禁止条約を想起する必要があった。問4の「交渉相手の首相の国」は資料中に見慣れない「マクミラン首相」という名が出てきて困惑したかもしれないが、PTBTの締結国が米英ソであることを知っていれば解ける。問5はサンフランシスコ講和条約が「片面講和」であることに注意したい。
第3問 (24点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | 日本の政治小説に見る国際情勢 | 標準 |
B | 6 | 世界の人口の推移 | 標準 |
C | 9 | オセアニアの先住民 | 標準 |
世界史上の人々の交流をテーマとした大問。Aは空欄の前後を読み、効率的に入る語を確定させたい。問1の空欄アは、コシュートが活躍したという情報から1848年革命とわかる。問3は日本に関する問題。空欄ウは日本に有利である点から日朝修好条規とわかる。Bは表の読解がポイントとなるが、問4は知識要素もあわせて問われている。問5は会話文から人口密度の算出に必要な情報を得る必要がある。Cのオセアニア史は受験生の出来が分かれたかもしれない。問7は、ほぼ読解のみで解くことができる。
第4問 (17点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 8 | オーウェル『カタロニア賛歌』 | やや難 |
B | 9 | イリヤ・レーピン「イワン雷帝とその息子」 | 標準 |
歴史評価の多様性をテーマとする問題。Aでは昨年度と同じくオーウェルの著書が題材とされ、1930年代における日独伊の動向が問われた。問1は満州事変の時期がスペイン内戦以前での数年間であることを、問2はエチオピア侵攻と国際連盟の対応までを想起したい。問3はファシズム本来の意味からひもとき、その特徴から判断したい。国民社会主義はナチ党の標語である。Bの問5では印紙法撤回までを問うのはやや細かいか。問6では初見事項について推測する問題だが、上映禁止期間ではない選択肢を排除できれば解答を絞れる。
第5問 (17点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | サン=ドニ大修道院の墓棺群 | 標準 |
B | 8 | 中華街の関帝廟 | 標準 |
世界史上の墓や廟をテーマとして、中世ヨーロッパや近世中国史について出題された。問2、空欄ウは文中にはなく図中にのみ存在する。文章を読むと、イのフィリップ2世からルイ9世の墓の南にはメロヴィング家とカロリング家の墓が並べられたとあるので、ウにはピピンが入る。問4、中国人の移民に関する問題で、中国から東南アジアに移住した人々が福建・広東出身という地域までは覚えていない人もいたかもしれない。問5は地図問題。文中の空欄エの新疆の場所を問うているがムスリムが多く住むというヒントからも判断できるだろう。
平均点(過去5年分)
年度 | 2021年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 |
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平均点 | 63.49点 | 62.97点 | 65.36点 | 67.97点 | 65.44点 |