物理
総評と分析
※前年との比較は、2021年度大学入学共通テスト(1/16・17実施)との比較です。
原子分野から必答問題の大問として初めて本格的に出題された。また、探究活動や実験をもとに考察力を試す出題が多く見られた。
物理法則についての数式処理よりも、「ある物理量が何と何で決まるか」というような言葉での理解が重視されている印象である。
問題分析
大問数 | 昨年と変わらず4 |
---|---|
設問数 | 昨年から1減って20 |
解答数 | 昨年から3減って25 |
問題量
- 問題記載ページは昨年と同じ24であり、試験時間に対して適量といえる。
出題分野・出題内容
- 第1問は物理の複数分野(波動、力学、熱、電磁気)からの小問集合形式による出題。
- 第2問は物体の運動に関する実験とそれについての考察を扱った出題。
- 第3問はコイルに生じる誘導起電力に関する実験とそれに関する考察を扱った出題。
- 第4問はボーアの水素原子モデルに関する出題であるが、力学知識のみで答えられる問い、力学と電磁気の融合問題も見られた。
出題形式
- 昨年は第2問、第3問においてAとBに分けられ異なる項目からの幅広い出題であったが、今年はこのA、B分けがなくなり、一つながりの問題で幅広い項目を扱っている。
難易度(全体)
- 難易度は昨年度からやや易化した。考えやすい問題も見られた一方で、実験に関して考察する問題や、物理的な仮説を検証する問題など、考察力が試される共通テストらしい出題も多かった。原子分野の知識が必要な問題が出題された。
※昨年は得点調整が行われたため、難易度は得点調整前との比較
第1問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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問1 | 5 | 波の干渉 | やや易 |
問2 | 5 | レンズ | 標準 |
問3 | 5 | 力のモーメント | 標準 |
問4 | 5 | 内部エネルギーと状態変化・断熱変化 | 標準 |
問5 | 5 | 電流と磁場 | 標準 |
昨年同様、第1問は小問集合だった。問1は波の干渉についての基本的な問題で、2つの波源が逆位相で振動しているというのがどういうことかわかっていれば容易。問2はレンズによる像を扱う問題で、レンズを通る光の経路を作図すればよい。問3は力のモーメントに関する問題で、点Cの周りの力のモーメントのつり合いを考えるのが楽。問4は熱力学からの出題で、内部エネルギーと温度の関係や、熱力学の第一法則を用いる。断熱膨張で温度が下がることは覚えていた受験生も多かっただろう。問5は電流が作る磁場の向きと、電流が磁場から受ける力の強さと向きを答える問題であった。
第2問 (30点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
30 | 運動の法則の実験的検証・力積と運動量 | 標準 |
第2問は力学からの出題であった(昨年は電磁気)。物理実験をテーマにした問題で、問1は問題文中で与えられた(誤った)仮説をグラフに表す問題。横軸が力なのか質量なのかにまず着目しよう。問2は実験の条件を考える問題で、ばねばかりの目盛りが力に対応していることと、力を変えるとどうなるかを調べるためには質量は変えてはならないことがポイント。問3は仮説が間違っている理由を選ぶ問題で、速さが一定でないので力と質量のみでは速さが定まらないことに注目する。問4は力が一定なので運動量の変化量も一定であることから解答する。問5・6は運動量の保存を考える問題で平易。問5では打ち出された小球も水平方向の速度を持っていることに注意する。
第3問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
25 | 電磁誘導 | 標準 |
第3問は主に電磁気から出題された(昨年は波動)。磁石がコイルの内部を通過するときに生じる誘導起電力がテーマ。問1は、グラフの2つの変化が、磁石がそれぞれのコイルを通過したときのものであることから解答する。問2の16はコイルを流れる電流が作る磁場から磁石が受ける力の方向を考える(エネルギーがジュール熱として必ず失われてしまうことを考えてもよい)。17は電流を小さくすれば磁石が受ける力も小さくなることが、18は台車を重くすれば空気抵抗の影響が小さくなることがポイント。問3は時間間隔から速さが同じであることがわかるので、コイルを貫く磁束を変化させて誘導起電力を大きくする方法を考える。問4はコイル1だけ電圧の向きが異なっていることに着目する。問5は重力によって台車の速さが大きくなっていくことが、電圧の時間変化とどう対応するか考える。
第4問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 円運動・ボーアの原子模型 | 標準 |
第4問は円運動とボーアの原子模型について出題された(昨年は力学)。問1は円運動の角速度や加速度の導出に関する基本的な問題で、考えずとも結果を覚えていた受験生も多かっただろう。問2は与えられた数値から万有引力と静電気力の比を計算する問題で、指数部分だけわかればよいので、適宜省略して要領よく計算したい。問3はボーアの原子模型に関する問題で、半径が量子数を用いて与えられているので、電子の力学的エネルギーを半径を用いて書き直してから(速さを消去してから)計算すると手間が大幅に減らせる。問4はエネルギー保存と光子のエネルギーに関する問題で、光子のエネルギーがプランク定数と振動数の積で表せることを知っておく必要があった。
平均点(過去5年分)
年度 | 2021年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 |
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平均点 | 62.36点 | 60.68点 | 56.94点 | 62.42点 | 62.88点 |