世界史B
総評と分析
共通テストらしい読解混じりの出題が多かった。特に長文を読解させて、知識と読解内容を併用して解かせる問題が目立った。
大量の史資料を掲載して読解させるという点では例年の共通テストの傾向と変わらなかった。今回はとりわけ文字史料が多く、史料以外のリード文も読解しなければならない文章が長かった。それぞれの難易度は高くないが、読み進めるのに苦労した受験生が多かったのではないかと思われる。
問題分析
大問数 | 5で前年から変更なし。 |
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設問数 | 34で前年から変更なし。 |
解答数 | 34で前年から変更なし。 |
問題量
- 設問数や解答数は例年と変わらないが、概評で示した通り読解に時間を要する。
出題分野・出題内容
- 西洋史・東洋史という観点では、やや西洋史が多かった。東洋史が多かった昨年からの揺り戻しと見られる。
- 時代別では、前近代史からの出題が多く、特に中世史からの出題が著しく増加した。近現代史は特に現代史(20世紀後半以降)からの出題が少なかった。対策をとっていた受験生にとっては肩透かしだったと思われる。
- 分野別では、バランス良く政治史・社会経済史・文化史が出題された。ただし、文化史の中身は中国史に偏っていた。
出題形式
- 昨年の史資料問題はほぼ読まなくても解ける実質的な知識問題と、熟読を要するものが混在していたが、本年は知識と読解で得た知識の双方を必要とする問題が多く、知識問題と読解問題がうまく融合していた。
- 文字史料の数が大きく増加し、データを扱った表・グラフや図版も増加した一方、地図問題は減少した。
- 試行調査を除く共通テストとしては初めて家系図を使用する問題が出題された。
難易度(全体)
- 昨年より難化。必要な知識水準も読解の難易度も大きくは変わらないが、問題文の文章も選択肢の文も長いものが多く、高い情報処理能力が求められて、苦戦した受験生が多かったと思われる。
第1問 (16点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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A | 8 | 女性参政権獲得の歴史 | 標準 |
B | 8 | 古代中国史の女性の地位 | 標準 |
問1、選択肢は「BRICS」がやや細かいものの消去法でも対応できる。問2は純粋な知識問題であった。問3、「室井さんのメモ」の判断に戸惑うが、会話文を読んだ上でカナダ以外の自治領は20世紀に成立しているので誤りとわかる。問4、選択肢は会話文に沿ったものを選ぶ。資料の後半では北方の状況について言及されており、「平城」という情報から北魏について言及されていると判断できる。問5、こちらも会話の流れから正答を選ぶ。拓跋国家の知識がなくとも、資料と会話文を丁寧に読めば正答できる。問6はほぼ知識問題といえる。
第2問 (18点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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A | 9 | フランス王家の歴史 | 標準 |
B | 9 | イスラーム王朝におけるカリフの正統性 | 標準 |
問1は図と家系図を用いた問題だが、会話文を読めばほぼ正答を導ける。問2と問3は純粋な知識問題。問4、イベリア半島の歴史を選ばせる問題。資料1よりも3つ目の空欄から判断する方が容易だろう。後ウマイヤ朝がファーティマ朝に対抗してカリフを称した事項は教科書にも記述がある。問5は知識問題。問6は知識で消去できる選択肢と資料の読解で判断する選択肢が混在しており、頭の切り替えが必要となる。
第3問 (24点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 6 | ナポレオン1世への歴史的評価 | 標準 |
B | 9 | 科挙についての歴史上の議論 | 標準 |
C | 9 | 中国における書籍分類の歴史 | 標準 |
歴史上の人物や制度について議論する高校や大学の授業が場面として設定された。文章のうち二つが中国史であり、文化史の問題が多かった。問2は地図問題で、aがハイチ(サン=ドマング)、bがエルバ島、cがセントヘレナ島。問3、空欄ウは周囲の文から朱子学を入れる。問4は「書院」の語から国語的に解答可能。問5、官吏任用制度史の知識と文章Bの後半の読解を組み合わせて解く。問7は『詩経』と『資治通鑑』の制作年代に注意。問8は文章Cの読解と知識の両面が問われているが、木版印刷技術の普及は宋代であることに注意したい。
第4問 (24点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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A | 6 | ウマイヤ朝におけるビザンツ貨幣の模倣 | 標準 |
B | 9 | マラソンの語源となった出来事の虚実 | 標準 |
C | 9 | ベーダ『イングランド教会史』のアングル人概念 | 標準 |
「歴史資料について」と題して、似ているが異なる部分をもつ複数の資料や、同一資料内の概念の比較が題材とされた。Aは図像を扱うが、直接解答には関わらない。問1では訂正の出ていた部分が大きな手がかりとなった。Bは知らないギリシア人の名前がたくさん出てきて困惑したかもしれないが、落ち着いてそれぞれに関する情報を整理したい。Cの問7はグレゴリウス1世の年代があやふやだったかもしれないが、大移動後のアングル人に布教したと考えれば時系列はわかるだろう。
第5問 (18点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | 戦間期東南アジアの輸出相手地域 | 標準 |
B | 9 | 産業革命と人口変動 | 標準 |
歴史統計を題材に、表やグラフの読解を前提とする問題が集中して出題された。Aの問2は空欄アの国を特定するのに各地の宗主国と表中の宗主国の順位を確認するという方法と、1929年という年代を手がかりとする方法があった。後者が楽だが、結局問3では前者と同様の手順が必要になる。Bの問4はイの選択肢文が全てバラバラにもかかわらずこちらの正誤だけでは絞り切れないので注意したい。むしろウの選択肢文を見ると年代から1つに絞ることができ、表を検討する必要はない。問5はグラフを検討せずとも正解を導いてしまってよい。
平均点(過去5年分)
年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 |
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平均点 | 65.83点 | 63.49点 | 62.97点 | 65.36点 | 67.97点 |