日本史B
総評と分析
会話文形式やメモを活用した問題が多数を占め、史資料も豊富に掲載するなど、昨年同様に思考力・判断力を測る出題傾向が強かった。
通常のリード文形式の出題は第2問のみで、調べ学習や「劇の台本作成」をもとにしたリード文形式となった。史料問題のほか、昨年にはなかった図表の分析問題が出題され、読み取り問題の比重が高いと言える。
問題分析
大問数 | 6で昨年から変更はない。 |
---|---|
設問数 | 32で昨年から変更はない。 |
解答数 | 32で昨年から変更はない。 |
問題量
- 分量的には昨年と変化はなく、読み取り問題も同様に出題され、解答に時間を要する。
出題分野・出題内容
- 出題分野は、昨年と同様に、通史・古代・中世・近世・近代・近現代史であった。また、現代史は第6問のBで2問出題され、昨年から1問減った。
- 出題内容は政治・外交史が中心である一方で、文化史の問題が昨年よりも多く出題された。
出題形式
- 全体の半分以上を組合せ問題が占めた。また、昨年同様に、最後の設問でリード文を踏まえて正誤を判断する大問も出題された。
- 図版の掲載数が昨年から増え、それらを分析する問題も見られた。
- 共通テスト「世界史B」のように、複数の意見に対して「正しい」「間違っている」を判断する問題が出題された。
難易度(全体)
- 昨年よりもやや易化した。日本史の知識を問う問題は細かい内容のものがいくつか見られたものの、史資料の読み取り問題については昨年と比べて取り組みやすいものが多かった。難化した昨年の本試験を踏まえて試験対策をしていれば、ある程度高得点をとることも可能であっただろう。
第1問 (18点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | 古代・中世の政治・外交 | 標準 |
B | 9 | 古代~近代の政治・外交 | 標準 |
「地図から考える日本の歴史」をテーマとし、実際に古代~近世に描かれた地図も掲載しながらの出題となった。時間配分にも注意して取り組みたい。問1は、各史料の年代を踏まえ、選択肢の「大化改新」や「大宝律令の制定」の時期に注意して判断する。問3は提示された説明を踏まえる問題で、Xは「平城太上天皇の変」の内容、Yは「蝦夷島」を通じた「北方交易」の存在に着目する。問6は全体の内容を整理する問題。dはBの会話文中に伊能忠敬の地図が「幕末に」利用されたことが述べられていることから誤りであるが、やや判断しにくい。
第2問 (16点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 10 | 原始・古代の政治・文化 | 標準 |
B | 6 | 古代の政治・文化 | 標準 |
「日本古代の陰陽道の歴史」をテーマとした出題。テーマの特性上、文化史に関する出題もいくつか見られた。問3は人物名が伏せられているため、出来事と人物を結びつけて押さえていたかがポイント。Iは菅原道真、IIは長屋王、IIIは早良親王で、特に早良親王は細かい。問4の史料問題は、史料1がX、史料2がYに対応しており、各史料の内容を抽象化できるかが問われた。問5はリード文や問4の史料を踏まえて考える問題。a・bで迷ったかもしれないが、bは文章Bの「地方官衙などでも書き写して備えられた」から誤りと判断する。
第3問 (16点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
16 | 中世の社会・経済・文化 | やや難 |
「中世の京都」をテーマとする出題。文化や経済についてやや細かい理解が問われた。問1はやや戸惑うか。「商業の中心地」というポイントを押さえ、Xは会話文中の「ものすごい量の銭の入った容器」に着目する。問2のIは、法勝寺が白河天皇による造営であるため、厳密には「法皇」ではなく「天皇」が正しい。問3は撰銭令の史料が出題されたが、永楽通宝に関するc・dの判断は困難なものだっただろう。問5は、模式図を用いた問題。Yは遠隔地交易に用いられた「為替」、Zは荘園から荘園領主に向かっているため「代銭納」となる。
第4問 (16点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
16 | 近世の政治・社会・外交 | 標準 |
近世における人々の結びつきをテーマとする出題。問2は、IIの十組問屋の年代がやや細かいが、IIIの株仲間公認よりも年代的に後ではないことに気づけるかどうかがポイント。問3は、史料1の「備前藩」や「津山藩」、「蘭学」の記述を踏まえれば正誤判断は可能。問4のa・bは、史料2の「咨文」や「回咨」の記述が注釈から公文書であるとわかり、aと判断できる。c・dは、1751年の史料であることを考慮に入れつつ、海舶互市新例が1715年に制定されたことを知っていればdが誤りと判断できる。
第5問 (12点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
12 | 近代の政治・外交・文化 | 標準 |
架空の人物の経歴をもとに、近代の政治・外交などが問われた。問1のXは四国艦隊下関砲撃事件を指す。問2のIは1876年の神風連の乱、IIは1880年代の井上馨の外交交渉、IIIは幕末の「ええじゃないか」を指す。問3は、Xの史料読解は易しいが、Yは国定教科書制度の開始年(1903年)は細かい。問4の出題形式は、日本史Bの本試験で初めて登場した。主人公の年齢から年代を換算する必要があり、またタクの発言の正誤判断は、屯田兵に士族授産の意味もあったことなどを想起できるかどうかがポイントだった。
第6問 (22点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | 近代の政治・外交・文化 | やや難 |
B | 13 | 近現代の政治・外交・経済 | やや難 |
「旅」をテーマに近現代の政治・外交が問われ、世界史との関連事項が目立った。問2のXの上海は、アヘン戦争後の南京条約で1842年に開港されている。問3は(2)の正誤判断が難しく、(4)が旅順で正しいと判断する必要がある。「かつて」とあるのは関東都督府が1919年に関東庁・関東軍に改組されたため。問5は、産業革命期が貿易赤字だったと判断するのが難しい。問7のXはそもそも東アジアの共同防衛組織自体が存在しないが、日本国憲法第9条の点からも考えてみたい。Yの第1回アジア・アフリカ会議はインドネシアのバンドンで開かれた。
平均点(過去5年分)
年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 52.81点 | 64.26点 | 65.45点 | 63.54点 | 62.19点 |