倫理、政治・経済

総評と分析

倫理分野では従来の傾向通り、原典資料などを多く用いた読解問題を中心に出題された。政治分野では、過去2年は少なかった国際政治の出題が増えたほか、2021年少年法改正の出題が特筆される。経済分野では、実際の統計数値や模式的なデータを分析する設問が目立ち、数量的理解力が問われた。


第1~4問が「倫理」からの抜粋、第5~7問が「政治・経済」からの抜粋という構成は例年通り。第1~4問の倫理分野では資料文や会話文の趣旨を踏まえて正解を選ぶ読解問題が多く出題された。第5~7問では、第5問の問4(リサイクル率)のように、学習の機会がなさそうな話題について、設問文の誘導に従って答える設問が多用された。政治分野では知識問題もバランスよく配され、少数だが裁判の判例集など専門的な資料の出題も見られた。

問題分析

大問数 前年と同じ7。
設問数 前年と同じ32。
解答数 前年と同じ32。

問題量

  • 倫理分野では写真・絵画・グラフの掲載がなく、原典資料は6つ収録、それ以外にもレポートや会話などの長い文章があり、読み解くのに時間がかかる構成。政経分野の設問数・資料読解量は前年並み。

出題分野・出題内容

  • 前年と同じく、全設問が「倫理」および「政治・経済」と共通。
  • 第1問(東西源流思想)、第2問(日本思想)、第3問(西洋近代思想)、第4問(現代の倫理・青年期・心理学)は、いずれも「倫理」からの抜粋で、それぞれ「正義」「問い」「自由」「格差社会における運と努力」がテーマになっている。資料文は三木清『読書と人生』、シェリング『人間的自由の本質』、ロールズ『正義論』からの抜粋など。
  • 政経分野の第5問(経済分野の総合問題)、第6問(政治分野の総合問題)、第7問(SDGs:持続可能な開発目標)は、いずれも「政治・経済」からの抜粋。

出題形式

  • 倫理分野では、読解力を駆使しながら、「メモ」「読書ノート」「レポート」「会話」などの空欄を埋める形式の設問が目立つ。空欄が「a」から「d」まで4つある設問も見られた。
  • 政経分野では、正文か誤文を選ぶだけの単純な正誤判定問題は前年の2から5に、該当するものをすべて選ぶ組合せ問題は前年の1から3にそれぞれ増えたほか、センター試験から見られた年代順の問題の設問数が前年と同じ1であった。

難易度(全体)

  • 倫理分野ではページをめくる必要のある読解問題が多く、また2行の選択肢や記述がある問題でも受験生には最終的な正誤を確定させられない内容が目立つため、やや難化。政治分野では、少年法などの知識問題が目立つほか、前年に一旦なくなった最高裁判決文の出題が復活するなど、やや難化。経済分野でも、リサイクル率や国内総生産など細かな数量的把握が必要な設問が目立つ。以上のトータルで、難化している。

第1問 (12点満点)

配点 出題内容 難易度
12 さまざまな「正義」の考え方(東西源流思想) やや難

さまざまな「正義」の考え方をテーマとした、東西源流思想分野からの出題。問1は横断的な内容の出題だがいずれの記述も細かく、在家信者と出家信者の扱いの違いなども盲点的。問2のパリサイ派やジャイナ教などもやや細かい。問3は『荀子』を用いた読解問題で「性と偽の区別」がポイント。問4はプラトン『国家』中のソフィストの主張とキケロ『義務について』を用いた空欄補充問題で、特に後者の読解は応用的。

第2問 (12点満点)

配点 出題内容 難易度
6 「問い」について(日本思想その1) 標準
3 「問い」について(日本思想その2) 標準
3 「問い」について(日本思想その3) 標準

「問い」をテーマとした日本思想史分野からの出題。問1は最澄の一乗思想と空也の事績を扱った知識問題だが正誤判定するにしては内容が細かい。問2は日本の神々やその解釈をめぐるやや細かい出題。問3は伊藤仁斎の「仁」の説明を選ぶ問題で、前年の本居宣長の「真心」の問題に通じる。問4はやや長い生徒の日記と三木清『読書と人生』を両方読む必要があり、内容は難しくないが読解量が多く、またページをめくる必要があるので解きにくい。

第3問 (12点満点)

配点 出題内容 難易度
6 自由について(西洋近代思想その1) やや易
6 自由について(西洋近代思想その2) 標準

ⅠとⅡで会話は区分されているが、テーマは一貫している。問1は規範や法を考察した思想家についての出題だが、ウが本当にグロティウスでないのかは迷うだろう。問2はカントに関してまとめた「読書ノート」を使った問題で、基本的な内容。問3は会話文とシェリング『人間的自由の本質』の両方を読んで答える問題で、ページをめくりながら解く必要がある。問4は、全体のまとめとしてのレポートの空欄補充問題。やはりページをさかのぼりながら解く必要があり、該当箇所を探す手間などを考えると骨が折れる。

第4問 (14点満点)

配点 出題内容 難易度
14 社会的格差における運と努力 やや難

社会的格差における運と努力をテーマにした、引き続き読解量の多い大問。問1のアの記述内容も、イのサリヴァンも細かい。問2は貧富の差に関わる思想や問題をめぐる設問だが、社会的な教養も求められ、受験生が断定的に正誤判定するのは困難だろう。問3はロールズの思想の理解と『正義論』読解の両方が求められた設問で、素早く正確に各選択肢の記述内容を把握する必要がある。問4は長い会話文のaからdまでが空欄になっている珍しいパターンの問題であり、ページをめくる必要がある上に選択肢の文章も長く、手がかりもややこしい。

第5問 (19点満点)

配点 出題内容 難易度
19 経済分野の総合問題 やや難

「政治・経済」第2問から6設問を抜粋。問1~3は地方自治にかかわる設問で、共通テストでは地方自治が頻出分野になっている。問4のリサイクル率は目新しい話題だ。問5(日本国債の保有者の構成比)は時事問題。問6(国内総生産の構成)も新傾向の出題。

第6問 (19点満点)

配点 出題内容 難易度
19 政治分野の総合問題 やや難

「政治・経済」第3問から6設問を抜粋。共通テストでは、2021年度(両日程)・2022年度(本試験)とも国際政治の出題がわずかであったが、今回は問1・2が国際政治の設問で、問3も防衛問題。また、問5では2021年少年法改正が扱われ、特定少年などが出題された。

第7問 (12点満点)

配点 出題内容 難易度
12 SDGs(持続可能な開発目標) 標準

「政治・経済」第4問から4設問を抜粋。問1・2の地球環境問題のうち、京都議定書・パリ協定の問2は単に正文を選ぶだけの単純な正誤判定問題だが、「政治・経済」分野としては珍しく、各選択肢の記述が4~5行と長く、集中力が必要。問3の人権理事会は出題例がまれだが、消去法で解くのは難しくない。問4(新興国の対外債務)も出題例がまれだが、表に関する記述の正誤の判断は易しい。

平均点(過去5年分)

年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度 2018年度
平均点 69.73点 69.26点 66.51点 64.22点 73.08点
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