国語

総評と分析

全体として出題形式に大きな変化はなく、昨年同様複数の文章の関連を問う問題や言語活動の過程を取り上げた問題が出題されている。


第1問(現代文)は建築に関する同一の引用文を含む2つの文章が提示された。第2問(現代文)は、設問数は増加したものの解答数は変わらず、設問形式についても昨年から大きな変化はなかった。第3問(古文)は、1つの本文に対し、設問の中で関連する資料を提示するという形式になったが、全体の設問構成に変化はなかった。第4問(漢文)は、昨年度の詩と文章から、問題とその答案という2つの文章を用いたものになったが、設問内容に大きな変化はなかった。

問題分析

大問数 昨年と同様の4。
設問数 昨年に比べ現代文で2増えたため、全体としては2増の24。
解答数 昨年に比べ現代文で1増えたため、全体としては1増の37。

問題量

  • 第1問は文章Iが約2300字、文章IIが約1100字で全体として約3400字であり、昨年より100字程度減少、第2問は約4100字で昨年より900字程度増加、第3問(古文)は本文が約1100字、問4の引用文が約200字で全体として約1300字であり、昨年より100字程度増加、第4問(漢文)は192字(空欄を含む)で、昨年より13字減少した。

出題分野・出題内容

  • 近代以降の文章2題、古文1題、漢文1題という構成は昨年から変化なし。
  • 第1問(現代文)は柏木博『視覚の生命力――イメージの復権』(文章I)と呉谷充利『ル・コルビュジエと近代絵画――二〇世紀モダニズムの道程』(文章Ⅱ)、第2問(現代文)は梅崎春生「飢えの季節」、第3問(古文)は『俊頼髄脳』(本文)と『散木奇歌集』(問4の引用文)、第4問(漢文)は白居易『白氏文集』からの出題。

出題形式

  • 第1問(現代文)は傍線部説明を中心として、最終問では3人の生徒による「話し合い」の場面という設定で対話を完成させる空欄補充問題が課された。漢字問題は昨年度を踏襲し、漢字の意味を問う問題が出題されている。第2問(現代文)は昨年同様、主人公である「私」の心情を問う問題を中心としつつ、複数の資料を用いた問題では、舞台となった時代の広告を用いて本文の表現を考察するものが出題された。第3問(古文)は、昨年度と同様、2つの文章を関連づけて考察させる設問が、教師と生徒との会話文の空欄を埋めるという形式で出された。またその中で、連歌における掛詞の技巧が問われた。第4問(漢文)は、予想問題とその模擬答案という本文の形式は珍しいものだったが、設問は重要語や句法の理解を基礎とし、本文の論理展開をふまえて一文一文を理解していくもので、オーソドックスなものだった。

難易度(全体)

  • やや難化。現代文は紛らわしい選択肢を含む設問が散見され、やや難化した。古文・漢文は昨年と同程度。

第1問 (50点満点)

配点 出題内容 難易度
問1 10 漢字の知識を問う問題 標準
問2 7 傍線部内容説明問題 やや易
問3 7 傍線部理由説明問題 やや易
問4 7 傍線部内容説明問題 標準
問5 7 傍線部内容理解問題 やや難
問6 12 対話による内容理解問題 やや難

出典は柏木博『視覚の生命力――イメージの復権』、呉谷充利『ル・コルビュジエと近代絵画――二〇世紀モダニズムの道程』による。ル・コルビュジエの建築について、異なる観点から考察した2つの文章に、同一の引用文が含まれている点が特徴。昨年度と同じ形式の漢字問題(問1)、傍線部説明(問2~問5)のあと、生徒3人の「話し合いの様子」を読ませて複数の文章の関連づけが問われる(問6)。解答数は1つ増えて12、読解問題は後半に行くにつれて難度が上がる。

第2問 (50点満点)

配点 出題内容 難易度
問1 5 心情説明問題 標準
問2 6 心情説明問題 標準
問3 6 心情説明問題 標準
問4 6 状況と心情の説明問題 やや難
問5 7 心情説明問題 やや難
問6 7 心情説明問題 標準
問7 13 複数の資料による本文理解問題 標準

出典は梅崎春生「飢えの季節」(1948年発表)。昨年と同様、小説の一節からの出題である。解答数の増減はなかったが、本文量と設問数が増加したため、時間配分に注意する必要があった。出題形式については昨年同様、主人公である「私」の心情を問う問題を中心としつつ、最終問では同年代の広告を【資料】に用いて本文の内容を考察した【文章】が出題され、「私」のおかれている状況や心情を正確に読み取ることはもちろん、設問の意図を把握し、選択肢を精査することが求められた。

第3問 (50点満点)

配点 出題内容 難易度
問1 15 傍線部解釈問題 やや易
問2 7 語句と表現に関する説明問題 やや易
問3 7 内容把握問題 標準
問4 21 対話による内容理解問題 やや難

平安時代後期の歌人・源俊頼の歌論書『俊頼髄脳』より、藤原頼通邸における船遊びで連歌が成立せず宴が白けてしまったという故事を記した一節による出題で、問4に俊頼の家集『散木奇歌集』から俊頼の子俊重と俊頼による連歌とその詞書の引用があり、双方を合わせた本文量は、2つの文章の組合せであった昨年度とほぼ同等。設問形式は、問1の傍線部解釈が枝問3つ、問4が教師と生徒の対話文中に3つの空欄を設けて、それぞれ4つの選択肢から適当なものを選ぶ、という昨年度と全く同じ構成となった。連歌がモチーフとなっており、問4では掛詞の技巧に留意した解釈が求められる点で、昨年度とは違う難しさがあった。

第4問 (50点満点)

配点 出題内容 難易度
問1 12 語句の意味問題 標準
問2 6 傍線部解釈問題 標準
問3 7 返り点と書き下し文の問題 やや難
問4 6 比喩の理解を問う問題 標準
問5 5 空欄補充と書き下し文の問題 やや難
問6 6 傍線部内容説明問題 標準
問7 8 主旨把握問題 標準

昨年、一昨年は本文に詩が含まれていたが、今年は2つの文章が出題された。本文は、唐の白居易がみずから作った官吏登用試験の予想問題と、それに対する模擬答案の一部。君主が賢者に出会えない原因とその解決策を求める問いに対し、賢者の仲間に推挙させるべきだと答えたもの。昨年同様、語句の意味や訓読、解釈、空欄補充を含む問題などが出題されており、このうち問3は構造理解にやや時間を要する。また複数の比喩の理解が問われているため(問4・6)、内容を整理して読む必要がある。全体として設問の形式や難度は標準的であった。

平均点(過去5年分)

年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度 2018年度
平均点 110.26点 117.51点 119.33点 121.55点 104.68点
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