数学II・数学B
総評と分析
昨年よりも易化したが、問題ごとの難易度の差が大きく、解く順序に工夫が必要である。
計算量は減少したが、第2問〔2〕や第3問(2)のように、問題文をしっかりと読んで丁寧に考察しなければならない問題が昨年に引き続き見られた。
問題分析
大問数 | 大問数5で昨年と同じ。 |
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設問数 | 設問数は24で昨年より6増。 |
解答数 | 解答数は95で昨年より3増。 |
問題量
- 分量は昨年と同程度である。第1問は比較的取り組みやすいが、第2問は昨年に比べて大幅に分量が増えた。全体を通して、大問・小問ごとの難易度の差が大きかった。また、第2問〔1〕や第3問(2)のように設定を理解するのに時間を要する問題も見られ、試験時間内にすべての問題に取り組むのは易しくない。
出題分野・出題内容
- 第1問〔1〕は三角関数からの出題で、誘導に従って三角不等式を解いていく問題である。加法定理や2倍角の公式など、基本的な公式がきちんと使いこなせるかが問われている。
- 第1問〔2〕は指数・対数関数からの出題で、対数で表された数が有理数か無理数かを考察していく問題である。〔1〕と同様に、対数の定義や底の変換公式などの基本的な事項の理解が問われている。
- 第2問〔1〕は微分法からの出題である。前半は3次関数の増減に関する問題、後半は前半の設問の結果を利用して、円錐に内接する円柱の体積の最大値を求める問題である。
- 第2問〔2〕は積分法からの出題である。ソメイヨシノの開花予想日を積分の考えを用いて考察する目新しい設定の問題であった。
- 第3問は確率分布と統計的な推測からの出題である。ある地域で生産されるピーマンの重さを題材とした問題である。(1)は標本平均の期待値と標準偏差、信頼区間などを求める問題である。(2)はピーマンを重さによって2種類に分けることを題材に、二項分布や標準正規分布への近似などの理解を問う問題である。問題文が長いため、取り組みづらい。
- 第4問は数列からの出題である。複利法で、毎年はじめに一定額を預金した場合の数年後の預金残高を2通りの方法で考える問題である。類題経験の有無で差がついたと思われる。
- 第5問は昨年と異なり、空間ベクトルからの出題である。(1)は基本的である。(2)の後半以降はやや難しい。正射影ベクトルの知識があれば幾分考察しやすい。
出題形式
- 答えを選択肢から選ぶ問題が第1問で7、第2問で8、第3問で6、第4問で11、第5問で6であり、それ以外は数値を求めさせる問題である。
難易度(全体)
- 昨年と比べれば易しくなり、分量も時間に対して少なめである半面、問題設定を読み取るのに苦戦する箇所が多かった。第1問、第2問は比較的取り組みやすい。例年は第3問~第5問は手間がかかるのだが、昨年よりは難易度が控えめである。全体として大問・小問ごとの難易の差が大きかったため、取れる設問を見抜き、確実に取る力が例年以上に要求された。
第1問 (30点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
〔1〕 | 15 | 三角関数 | やや易 |
〔2〕 | 15 | 対数関数 | やや易 |
昨年と〔1〕〔2〕で分野の順番は同じであったが、〔1〕では昨年とは異なり、図形と式の要素が含まれない。〔1〕は三角関数の不等式の問題で基本的である。和積の公式が登場するが、特に難しい部分はない。注意深く解くのみである。〔2〕は対数関数の問題でこれも易しい。背理法の論証が登場するが多くの受験生がどこかで触れたことのある論証である。整数問題のような雰囲気もあるが、つまずく箇所はない。
第2問 (30点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
〔1〕 | 15 | 微分法 | 標準 |
〔2〕 | 15 | 積分法 | 標準 |
〔1〕は円錐に内接する円柱の体積の最大値に関する問題である。(1)で一般的な3次関数について考察し、(2)でそれを利用させるという構成になっているため、(1)は確実に解答したい。〔2〕は積分法の考えを用いてソメイヨシノの開花日を予想するという斬新な問題である。設定などを読み込むのに苦戦した者も多かっただろう。〔1〕と同様に、(1)は(2)の誘導となっている。(2)(ii)はf(x)のグラフをイメージして、(i)のときよりも上にくることを直感的に捉えられれば、具体的な計算は不要である。そのイメージができるかどうかで、解答時間に大きな差が付いただろう。
第3問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 確率分布と統計的な推測 | 標準 |
ある地域で生産されるピーマンの重さを題材にした問題である。(1)はピーマンの重さの平均値に関する信頼区間の問題である。信頼度が90%となっているが、信頼度95%のときと同じ方針で求めればよい。(2)は「ピーマン分類法」によって分類された2つのピーマンを袋詰めしたとき、規定の袋ができる確率に関する問題である。内容としては二項分布とその正規近似というオーソドックスな問題であるが、「ピーマン分類法」の説明や誘導の文章量が多いため、読み込むのに時間がかかっただろう。難易度は標準的であるものの、設定に一ひねりあったため、それを素早く把握できるかで大きく差が付いただろう。
第4問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 数列 | 標準 |
昨年に引き続き、漸化式の問題である。文章題という要素が強く、更に受験生が苦手意識を抱きがちな複利計算の問題のため見た目が難しく見える。試験場では焦った受験生が多かったはずである。しかし、特に難しい要素は無く、実際には得点しやすい問題である。漸化式を自分で作成する点は昨年と同様である。随分と誘導は丁寧であり、漸化式は簡単に求まる。計算の負担も少なめである。「見た目ほどには難しくない」ため、落ち着いて問題文を読んで進んでいくことがポイントである。
第5問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 空間ベクトル | やや難 |
本年度は昨年度とは異なり空間ベクトルから出題された。(1)は基本的な問いである。(2)の後半は、難しくはないのだが、ここでつまずいた受験生は意外に多いだろう。この空欄でつまずくとそれ以降は殆どの空欄で解答できない。(3)は、(i)は(2)と同様に内積の処理を行うだけであるが、(ii)は、(i)の活かし方や図形的な考察において少し苦戦しただろう。なお本問は、正射影ベクトルの知識があると、考察が楽になる。
平均点(過去5年分)
年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 |
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平均点 | 43.06点 | 59.93点 | 49.03点 | 53.21点 | 51.07点 |