地学

総評と分析

問題数は減少したが、図表問題が全体の3分の2を占め、読解や考察問題の占める割合が大きくなった。


設問数と解答数がともに、総合問題と固体地球分野と大気・海洋分野が1題ずつ減少し、全体では3題の減少となった一方で、図表問題が3題増加したことで、問題量は昨年並みだった。計算問題は昨年並の分量で、正答は選びやすかった。

問題分析

大問数 昨年と変わらず5。
設問数 昨年に比べ3減の27。
解答数 昨年に比べ3減の27。

問題量

  • 下書き用紙を除いた全体の分量は昨年より1ページ増加した。
  • 全体の文章量は昨年並みである。
  • 全体の問題量は時間に対して適量である。

出題分野・出題内容

  • 第1問は例年通り分野横断型の総合問題で、読図自体をテーマに全分野から出題された。
  • 第2問は地球分野から地球表面の高度分布、地震波、海嶺、沈み込み帯について出題された。
  • 第3問は固体地球と地質地史からの出題で、マグマ、地質断面図、人類の進化について出題された。
  • 第4問は大気・海洋分野からの出題で、オゾン層の破壊、亜熱帯環流について出題された。
  • 第5問は宇宙分野からの出題で、惑星と地球の運動、太陽と天体の運動、HR図について出題された。

出題形式

  • 6択形式の問題が2題で、それ以外は4択問題だった。
  • 全体の3分の2が図表問題で、高度な考察を要する読図問題も複数あった。
  • 計算の分量は昨年並で、正確に計算すると複雑だが、正答を選びやすいように選択肢が工夫されていた。

難易度(全体)

  • 設問数と解答数は減少した一方で図表問題が増加し、考察を要する問題も多く、単純な知識問題が減少した。全体の難易度は昨年並みだと思われる。

第1問 (20点満点)

配点 出題内容 難易度
20 二次元情報の三次元情報への変換 やや難

問1は東北地方の東西断面における太平洋プレート上面の深度分布を選ぶ問題で、海溝の位置は示されていないが、震源の深度分布の読図で正答できる。問2は薄片上の断面の形状と2方向に発達したへき開から、一般的な外形も鉱物名も正答できる。問3は模式的な谷地形の地質図問題であり、南北断面図を描けるようにしよう。問4は気温分布が正しい温帯低気圧の東西断面図を選ぶ問題で、前線の南側が暖気で上空ほど低温な図を選べばよい。問5はリゲルとアルニタクの遠近関係の読図が難しいが、破線に平行な等距離線を引けばよい。

第2問 (18点満点)

配点 出題内容 難易度
8 地球表面の高度分布、地震波と震源距離 標準
10 プレート境界の断層、火山前線、マグマの発生

Aの問1は地球表面の高度分布図に関する正誤の組合せ問題で、大陸棚を陸地に含めても海洋の面積を上回らないことは図1から読み取れる。問2は地震波形から震源距離の遠近を読図する問題で、地点AとCの初期微動継続時間の大小がやや読み取りにくい。Bの問3は海嶺とトランスフォーム断層における断層の種類の読図問題、問4は日本列島の東西断面における火山噴出物の堆積分布と火山前線の位置関係を選ぶ問題、問5は中央海嶺と海溝付近におけるマグマのでき方を選ぶ知識問題で、いずれも基本的な知識さえあれば正答できる。

第3問 (22点満点)

配点 出題内容 難易度
8 マグマ混合・結晶分化作用・造岩鉱物 やや易
8 地質断面図と示準化石、褶曲と断層の種類 やや易
6 人類の進化の時間スケール 標準

Aの問1と問2は安山岩質マグマがマグマ混合と結晶分化作用でできるときの鉱物と化学組成の変化を問う問題で、いずれも火成岩の造岩鉱物の知識から正答できる。Bは地質の読図問題で、問3のデスモスチルスの歯の化石が産出した地層の候補は示準化石の知識と不整合による時代の隔たりから、問4は褶曲の向斜・背斜と断層の正逆についての知識から正答できる。Cは人類の進化の時間スケールについての問題で、問5の読図問題ではホモ・サピエンスの出現時期についての知識も求められる。問6は新生代のできごとを選択肢から選べばよい。

第4問 (18点満点)

配点 出題内容 難易度
7 成層圏、オゾン層の破壊 標準
11 亜熱帯環流、地衡流、海水の密度構造、西岸強化 やや難

Aのリード文はオゾンホールの形成に雲の発生が果たす役割について述べられており、問1は成層圏の名称を答える平易な問題で、問2は雲が発生する温度条件ではオゾン層の破壊が促進されると考えればよい。Bのリード文では亜熱帯環流における海水面の高度分布について述べられており、問3は圧力傾度力の名称を答える平易な知識問題、問4は鉛直断面における海水の密度分布を選ぶ読図問題、問5は西岸強化についての知識問題である。問4は昨年の第4問Bと同様に、海面下におけるアイソスタシーの成立と海水の密度分布が題材となっている。

第5問 (22点満点)

配点 出題内容 難易度
11 火星から見た惑星現象と年周視差と年周光行差 やや難
11 太陽活動、天球、天体の運動、HR図 標準

Aは地球、火星、木星の軌道半径と公転周期をプロットしたグラフを与えた上で、問1では火星から見た木星の会合周期を、問2では火星から見た地球の最大離角の値を計算させ、問3では火星で観測される年周視差と年周光行差の地球での観測に対する大小関係を問われた。問1・問2は正確さを求めると繁雑な計算になるが、選択肢は正答を選びやすい数値になっている。Bの問4は太陽活動に関する、問5は天球に関する知識問題である。問6はHR図の読図問題で、絶対等級がマイナスでK型やM型の恒星は巨星であることから正答できる。

平均点(過去5年分)

年度 2022年度 2021年度 2020年度 2019年度 2018年度
平均点 52.72点 46.65点 39.51点 46.34点 48.58点
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