化学
総評と分析
実験の内容と結果を整理して考察させる問題が複数出題され、時間をかけて問題をしっかり読む必要があった。
標準的な問題が多くを占めたが、あまり見かけないような実験を題材として読解力と考察力を問う問題が散見された。特に、第5問の問3の透過率による気体濃度決定は題材自体が目新しく、問題文を丁寧に読む必要があった。
問題分析
大問数 | 5で昨年から変更はない。 |
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設問数 | 18で昨年から変更はない。 |
解答数 | 昨年に比べ、2増の35。 |
問題量
- 計算問題の数は昨年とほぼ同じであり、全体的に見ても問題量は昨年とほぼ同じだが、考察問題が複数出題されたため、やや負担が増加した。
出題分野・出題内容
- 第1問は物質の構成、物質の状態、第2問は物質の変化からの出題で、いずれも理論分野である。第3問は物質の変化、無機物質、第4問は有機化合物、高分子化合物からの出題である。第5問は硫黄化合物の二酸化硫黄や硫化水素を題材に、無機物質、化学平衡、酸化還元について問われた。
- 第1問の問4bは単位格子の粒子数と体積の比から考える。第2問の問4cは反応速度定数の変化と反応に要する時間の関係を予想すればよい。第3問の問3aは反応条件からX、Yを絞り込む必要があった。第5問の問3aは表の数値だけを用いて解答でき、bは透過率Tが透過前後における光の量の比率であることがポイント。
出題形式
- 昨年に続き、第1問の問4、第2問の問4、第3問の問3、第4問の問4、第5問の問3など比較的長文の問題を読み取り、それに関する問をいくつか配置する大問形式の問題が出題された。また、第1問の問4c、第4問の問4aでは、答えの数値自体を解答させる問題が出題された。さらに昨年にはなかったグラフ描写用の方眼枠が再登場した。
難易度(全体)
- 実験を題材にした読解力と考察力を要する問題や、目新しい題材を扱った問題が出題されている。全体としての難易度は、昨年並み。
第1問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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問1 | 3 | 化学結合 | 易 |
問2 | 3 | コロイド | 易 |
問3 | 4 | 飽和蒸気圧 | 標準 |
問4 | 10 | イオン結晶 | 標準 |
物質の状態の分野からの出題。問1は構造式がわかれば平易。問2はコロイドの用語に関する知識問題。問3は圧縮後の水蒸気がすべて気体であると仮定したときの水蒸気の圧力から求められる。問4のaは平易。bは粒子数と体積の比から計算すればよい。cはイオン結晶におけるイオンの半径比の限界に関する計算問題で、一度演習していれば難しくはない。
第2問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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問1 | 3 | 熱化学方程式 | 標準 |
問2 | 4 | 硝酸銀水溶液と塩化ナトリウム水溶液の電気分解 | 標準 |
問3 | 4 | 平衡定数 | 標準 |
問4 | 9 | 過酸化水素の分解反応速度 | やや難 |
物質の変化と平衡の分野からの出題。問1の熱化学方程式は典型的な計算問題。問2の電気分解も、標準的な知識問題。問3の平衡定数の問題も典型的で確実に得点したい。問4のaは基本的な知識問題。bは酸素の物質量の2倍が過酸化水素の物質量になることに注意する必要がある。cは、反応速度定数が反応速度にどう影響するかがポイントであったが、図2の結果と同じ濃度と体積の過酸化水素水を用いていることから、最終的に発生した酸素の物質量も同じになることから選択肢を絞れる。
第3問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 4 | フッ化水素の性質 | 易 |
問2 | 4 | 金属イオンの分離 | 標準 |
問3 | 12 | 1族、2族の金属元素 | やや難 |
無機物質の分野からの出題。問1はフッ化水素に関する正誤問題だが、ヨウ素とフッ素の酸化力の強さを問う問題。問2は典型的な金属イオンの分離に関する問題で、金属イオンがすべて溶解していたと仮定して1つずつ結果と照らし合わせて考えていけばよい。問3のaは希塩酸および室温の水との反応性から、選択肢を絞れたかがポイント。bは水酸化物、炭酸塩の反応式から冷静に計算を処理できたかどうかが問われる。
第4問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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問1 | 3 | アルコールの反応性 | やや易 |
問2 | 4 | 芳香族化合物の反応と性質 | やや易 |
問3 | 4 | 高分子化合物の構造 | やや易 |
問4 | 9 | トリグリセリドの構造 | 標準 |
有機化合物および高分子化合物の分野からの出題。問1のアルコールの反応性、問2の芳香族化合物の反応と性質、問3の高分子化合物の構造についての知識問題はいずれも基本的。問4のaは、1分子のXに4個の二重結合をもつことと、1個の二重結合には1分子の水素が付加することから解ける。bは、AとBが1対2の物質量比で得られたことと、AとBのどちらも二重結合をもつことより考えればよい。cは、Yには鏡像異性体が存在しないことよりアがHと決まり、さらに反応式からイはB由来の構造と決まる。
第5問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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問1 | 8 | 硫化水素と二酸化硫黄 | 標準 |
問2 | 4 | 酸化還元反応を利用した硫化水素の定量 | 標準 |
問3 | 8 | 透過率を利用した硫化水素の濃度決定 | やや難 |
火山ガスに含まれる硫化水素と二酸化硫黄に関する総合問題。問1のaは硫化水素と二酸化硫黄の標準的な知識問題。bは、二酸化硫黄の平衡に関する問で、ルシャトリエの原理から考える。問2は硫化水素とヨウ素、ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムの酸化還元反応の量的関係を整理できれば解ける。問3は二酸化硫黄が光を吸収する性質を利用して二酸化硫黄のモル濃度を求める実験考察問題。問3のaはグラフを作成するか、比例式を立式して求められる。bは透過率Tの対数とcおよびLが比例関係になることから考えればよい。
平均点(過去5年分)
年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 |
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平均点 | 47.63点 | 57.59点 | 54.79点 | 54.67点 | 60.57点 |