倫理、政治・経済

総評と分析

倫理分野では、大問数が増えたほか、読解力が大幅に試される出題となり、高校生目線の文章も増えた。政経分野は、2018年度試行調査の出題傾向をさらに発展させ、資料読解力が問われた。


倫理分野では、複数選択・任意選択など複雑な形式の問題は出ず、形式面ではセンター試験型が多く踏襲された。ただし大問数は3から4となり、資料文・画像・会話文も増加し、読解力が試された。政経分野の出題形式は試行調査とほぼ同様だが、最高裁判所民事判例集からの抜粋など専門的な資料が多用され、文章の読解力や図表のデータ理解力が大いに求められる出題であった。

センター試験・試行調査との相違点

  • 昨年度のセンター試験と比べて、倫理分野では内容面で読解要素がかなり強くなり、また高校生目線の文章も増えた。政経分野では、センター試験で過半を占めていた正文または誤文を選ぶだけ(資料読解なし)の単純な選択問題は2割(3設問)へと激減した。また2018年度実施の試行調査(「倫理」と「政治・経済」)と比べて、倫理分野では複雑な形式の設問がなくなった。政経分野では、古い順に並べる設問が消えた一方で、1設問で解答数2というかつてない形式も採用された。

問題分析

大問数 7
設問数 32
解答数 33

問題量

  • 倫理分野は、設問数自体は多くないが、解くために必要な資料文・会話文・画像がかなり多く解答に時間がかかる。政経分野も、設問数は多くないが、文章などの資料が多い。

出題分野・出題内容

  • 第1~4問が倫理分野、第5~7問が政経分野という構成へと変化した。
  • 第1問(東西源流思想)、第2問(日本思想)、第3問(西洋近現代思想)、第4問(現代の倫理・心理学)は、いずれも「倫理」からの抜粋。
  • 政経分野の第5問(民主主義の基本原理と日本国憲法)、第6問(現代の経済状況)、第7問(日本の国際貢献)は、いずれも「政治・経済」からの抜粋。

出題形式

  • 倫理分野は、冒険的だった試行調査よりもセンター試験に近く形式面で保守的だった。政経分野では、正文または誤文を選ぶだけの単純な正誤判定問題は3設問(センター試験では過半を占めていた)。該当するものをすべて選ぶ組合せ問題のほか、設問中の文章の空欄補充問題、図表問題、その他の組合せ問題も出題されたが、年代順の問題はなかった。

難易度(全体)

  • 昨年度のセンター試験と比べて、難易度はやや易化。倫理分野では読解量が増加する一方で設問数は減少し、やや易化。政経分野では平易な知識問題が減ったほか、ボリュームのある資料読解問題や計算を要する問題が増えて解答に時間がかかり、難易度としてはやや難化した。また試行調査(2018年度実施の「倫理」と「政治・経済」)と比べて、倫理分野・政経分野の難易度はそれぞれ、やや易化・ほぼ同等だろう。

第1問 (12点満点)

配点 出題内容 難易度
12 「恥」について(東西源流思想) 標準

「恥」をめぐる会話を題材とした源流思想分野からの出題で、「倫理」大問1の前半4問からそのまま抜粋。問1の「董仲舒」「スンナ派」「カリフ」などはやや細かい。問2はパウロの立場や「伝道」活動に関する空欄補充問題。問3は頻出のヘレニズムに関する出題。問4は会話文と資料文をともに読解する問題で、引用は上座部仏教の注釈者ブッダゴーサの『アッタサーリニー』から。

第2問 (12点満点)

配点 出題内容 難易度
6 日本における時間の捉え方と人生観・世界観(古代から中世) やや易
3 日本における時間の捉え方と人生観・世界観(江戸時代) やや易
3 日本における時間の捉え方と人生観・世界観(近現代) やや難

日本思想史分野からの出題で、いずれも「倫理」大問2から抜粋。問1はヘシオドスの「神統記」と「古事記」の共通点を答える問題で、「古事記」の概要を抑えていれば問題なく解ける。問2は図版および「ノート」の読み取りと知識の両方を使って答え、難易度は標準的。問3は空欄補充問題で、江戸時代の儒学思想に関する標準的な内容。問4では丸山真男、小林秀雄、吉本隆明という、日本思想史分野でも珍しい人物が扱われた。

第3問 (12点満点)

配点 出題内容 難易度
12 西洋近現代思想における「良心」のあり方 やや易

リード文の形式や分量はセンター試験の踏襲で、「倫理」大問3からの抜粋。問1はデカルトの「高邁の精神」について。問2は資料読解問題で引用はルソー「エミール」から。問3はキルケゴールの「実存の三段階」が題材で基礎的な内容。問4は冒頭のリード文を踏まえた上で、新たな会話文を読んで答える問題。読解する量は多く見えるが、内容は易しい。

第4問 (14点満点)

配点 出題内容 難易度
14 歴史の捉え方(心理学、現代倫理) 標準

「歴史の捉え方」をめぐっての会話文が題材で、「倫理」大問4からの抜粋。問1はフロイトの理論や具体例に関する空欄補充問題。問2は動物実験を題材にした複合的な問題。問3(1)はベンヤミンの「歴史の概念について」を題材にマルクス、ヘーゲルについて問われた。(2)では(1)の資料文、リード文、「レポート」を踏まえ、空欄補充をする必要があった。

第5問 (19点満点)

配点 出題内容 難易度
A 10 オープンキャンパスの法律の講義(公法と私法など) 標準
B 9 民主政治の基本原理と現代の政治(政治体制など) 標準

第5問は「政治・経済」第2問から6設問を抜粋して構成。問1や問3では「最高裁判所民事判例集」など見慣れない資料が多数引用された。全体を通して、教科書の基本的な理解があれば、読解は難しくない。また、問4(候補者男女均等法など)はセンター試験では少なかった時事問題で、やや細かな知識を要した。

第6問 (19点満点)

配点 出題内容 難易度
19 現代の経済状況(日本の雇用、労働組合、財政、国際通貨制度など) 標準

第6問は「政治・経済」第3問から6設問を抜粋して構成。表の読解や計算が必要な問題が複数出題され解答に時間を要したかもしれない。問4は不良債権を処理する際のより深い理解が必要とされた。また、問6はセンター試験(本試験)ではあまり出題されていない貿易構造の設問なので、自信をもって答えられた受験生は少なかっただろう。

第7問 (12点満点)

配点 出題内容 難易度
12 国際貢献(選挙の意義、インド等の諸統計、マイクロファイナンスなど) 標準

第7問は「政治・経済」第4問から4設問を抜粋して構成。資料読解に時間を要するかもしれないが、解答をする上での詳細な知識は必要としない。ただし、問6(マイクロファイナンス)の「グラミン銀行」はセンター試験に登場しておらず、やや細かい知識を要した。

大学入試センター試験平均点(過去5年分)

年度 2020年度 2019年度 2018年度 2017年度 2016年度
平均点 66.51点 64.22点 73.08点 66.63点 60.50点
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