化学
総評と分析
実験や物質の反応に関する考察問題や図の読解問題など、思考力を要するものが多く出題された。
試行調査の傾向が踏襲されて、初見と思われる実験や反応を題材にした比較的長い文章を読み、考察していく問題が出題された。特徴的な設問として、与えられたグラフから考察する問題や実験結果に関する文章から計算する問題など、思考力と読解力を要する問題が多く出題された。
センター試験・試行調査との相違点
- センター試験と同様の小問集合と、試行調査(2018年度実施)で見受けられた大問形式のものが出題された。試行調査と同様の方眼紙が与えられて解く問題も出題された。
問題分析
大問数 | 5 |
---|---|
設問数 | 18 |
解答数 | 29 |
問題量
- 比較的長文の問題も出題されており、読解に時間がかかるため、全体の問題量としてはやや多い。
出題分野・出題内容
- 主として、第1問は物質の状態、第2問は物質の変化と平衡、第3問は無機物質、第4問は有機化合物および高分子化合物、第5問はグルコースの反応と性質に関する問題。
- 第3問の反応の量的関係に関する問題は間違えやすい。
- 第5問はグルコースに関する長文問題で、読解力を要するものであった。教科書にはない性質や反応で、深い理解が必要。
出題形式
- 第1問の問4のaでは、答の数値自体を解答させる問題が出題された。第3問の問3、第5問の問1では比較的長文の問題が出題され、それに関する問をいくつか配置する大問形式の問題が出題された。
難易度(全体)
- 昨年度のセンター試験と比べて、やや難。試行調査(2018年度実施)とは同程度。第1問問4のようなグラフ考察、第3問問3や第5問問1のような思考力、読解力が必要なものがやや難しい。二次私大レベルの問題が出題されたが、センター試験を踏襲した問題も多かったので、難易度のバランスはとれている。
第1問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 4 | 金属の性質 | 易 |
問2 | 4 | 結晶格子 | 標準 |
問3 | 4 | 物質の溶解性と分子間力 | やや易 |
問4 | 8 | 気体の圧力と蒸気圧曲線 | やや難 |
物質の状態の分野からの出題。問1は平易。問2は、結晶格子の密度とアボガドロ定数との関係を問うもので、よくある問題。問3は物質の極性と溶解性についての問題で典型的。問4のaは、体積増加時の圧力から蒸気圧曲線での温度を読み取ればよい。bは、状態方程式から圧力を求める必要がある。慣れていないと手間取るところ。
第2問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 4 | 光が関わる化学反応や現象 | やや易 |
問2 | 4 | 空気亜鉛電池 | 標準 |
問3 | 12 | 氷の昇華と水素結合 | やや難 |
問1は、光が関わる化学反応や現象の正誤問題で、珍しいが平易。問2の電池の問題も、反応式の量的関係に注意すれば特に問題ない。問3のaは昇華するときの圧力と温度の条件を問うもので、悩んだ受験生が少なからずいたのではないか。bの昇華熱と水素結合の関係は間違いやすい。cはヘスの法則を利用して昇華熱を求める問題であるが、冷静に対処する必要がある。
第3問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 4 | 塩化ナトリウムの溶融塩電解 | やや易 |
問2 | 4 | 金属の反応性 | 標準 |
問3 | 12 | 錯イオンの反応と量的関係 | やや難 |
問1は塩化ナトリウムの溶融塩電解での反応が問われており典型的。問2の金属の反応性を問う問題も典型的で確実に得点したいところ。問3のaは基本的な鉄イオンの検出反応。b、cは初見の物質と反応と思われるが、条件を確実に整理していく必要がある。
第4問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 4 | 芳香族炭化水素の反応 | やや易 |
問2 | 3 | 油脂 | やや易 |
問3 | 6 | 脂肪族アルコールの反応と異性体 | やや易 |
問4 | 3 | 高分子化合物の構造と性質 | 標準 |
問5 | 4 | ポリペプチド鎖のらせん構造の長さ | やや難 |
問1のベンゼンおよびナフタレンの反応に関する知識問題は基本的。問2の油脂に関する知識問題も、定義をしっかりおさえていれば平易。問3のaは、アルコールの酸化反応に関する問題で、基本的。問3のbも、幾何異性体の有無に注意すれば、難問ではない。問4の高分子化合物の構造と性質は、細かい知識を問われている選択肢もあるが、誤った記述は比較的はっきりとわかったのではないか。問5は図やヒントも与えているが、比較的見慣れない問で、戸惑った受験生も多かったかもしれない。
第5問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 10 | 反応の量的関係と平衡定数 | 標準 |
問2 | 3 | 糖類の還元性 | やや難 |
問3 | 7 | 官能基の性質と反応の量的関係 | 標準 |
グルコースを題材とした総合問題。問1のaはα−グルコースとβ−グルコースの合計が0.100molになることに気づけば易しい。bはα−グルコースが0.066molになることより、それが表1の0.055から0.079molの間になり、答は0.5から1.5時間の間になる。cはα−グルコースの平衡定数を用いることに気づけば易しい。問2はXの水溶液が還元性を示さなかったことより、Xが鎖状構造に変化できないことがわかる。問3のaはホルムアルデヒドとギ酸の関係性を知っていれば易しい。bはグルコース1mol中の炭素原子数が6mol、ホルムアルデヒド1mol中の炭素原子数が1mol、ギ酸1mol中の炭素原子数が1molであることより求められる。
大学入試センター試験平均点(過去5年分)
年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 | 2016年度 |
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平均点 | 54.79点 | 54.67点 | 60.57点 | 51.94点 | 54.48点 |