世界史B
総評と分析
センター試験から大きく傾向が変わり、史資料の出題が増加した。第1日程とは概ね同じ傾向であった。
試行調査の傾向が踏襲されて、豊富な史資料(図版・表・グラフ・史料)が提示され、その上で小問が並べられた。特徴的な設問として、フランス大統領シラクの演説が引用されて自国(フランス)の歴史を見つめ直す問いがあった。
センター試験・試行調査との相違点(第1日程との相違点)
- センター試験に比べて史資料の使用が増加した。また、2018年の試行調査と概ね同じ問題量・傾向だったが、複数正解の問題や連動式の問題が出題されなかった。第1日程と比べると、細部に差異はあるものの、概ね同じ形式・傾向であった。
問題分析
大問数 | 5 |
---|---|
設問数 | 33 |
解答数 | 33 |
問題量
- 概ね第1日程と同じで、史資料問題が多く、解答には時間を要する。
出題分野・出題内容
- 西洋・東洋史という観点ではバランスよく出題された。東洋史の内訳も東アジアとその他の地域を扱った問題もほぼ同じ分量であった。
- 時代別では、第1日程と同様に、近代史(19世紀~20世紀前半)を扱った問題が圧倒的に多く、現代史(20世紀後半以降)を扱った問題がやや少なかった。
- 分野別では、政治史からの出題が多く、文化史の出題がやや少なかった。
出題形式
- 第1日程と同様に、豊富な史資料(図版・表・グラフ・史料)が提示され、その上で小問が並べられるという形式が多かった。
- 4択の正誤文判定の問題が少し増加し、文の組合せや空欄補充の問題が少し減少した。
- 問題の趣旨に沿った図版を選ばせる問題が出現した。
難易度(全体)
- 昨年度のセンター試験と同程度の難易度。要求される知識水準はやや下がったが、史資料の読解力が求められ、解答に要する時間が増えている。2018年の試行調査からは、要求される知識水準が下がったため、やや易化した。
第1問 (22点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 6 | リベリアの歴史 | 標準 |
B | 10 | パン=ヨーロッパ運動と植民地 | 標準 |
C | 6 | シンガポールの歴史 | 標準 |
出題が近現代に偏った大問となった。問1は文章Aの要約1・2の内容が難しいが、要約3まで読めば容易にリベリアと特定できる。問2は南アフリカとリベリアの共通点を見出すもので、少し珍しい出題形式となった。問3~5は1920年代の地図を想起する地理的な感覚が求められた。なお、図1を見るとソ連の領土の一部が「パン=ヨーロッパ」に含まれてしまっているが、解答上は気にしない方がいいだろう。問6は読解の要素があり、文章Cの史料を読むとラッフルズの思想がわかる。問7は現代史の知識が問われた。
第2問 (12点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 6 | 世界の工業生産における各地域のシェア | 標準 |
B | 6 | 19世紀の鉄道の歴史 | 標準 |
世界史上の工業・産業の変化に関するグラフ・表と、資料をめぐる教室での議論が題材とされた。問1は会話文とグラフの読み取りを合わせた問題。問2は図像が用いられたが文字による説明が付されており、一般的な知識問題であった。問3はドイツ関税同盟の歴史的役割を踏まえる必要があった。問4は生徒たちの意見の妥当性を判断する問題で、試行調査では見られたが第1日程では採用されなかった形式である。
第3問 (15点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | 古代文明誕生の条件 | 標準 |
B | 6 | カスティリャ王の使節派遣 | 標準 |
グローバルな交流を題材とした大問。A・Bとも空欄のある会話文を読んで設問に答える形式であった。問1の古アメリカ文明の特徴は、誤文がわかりやすいため正誤判断は容易であろう。問2のサトウキビはアメリカ大陸原産ではない農作物としてしばしば入試で登場する。問3はジャガイモ飢饉から空欄イがアイルランドであるとわかる。問4は易しいので確実に正解しておきたい。問5は先生の会話、特に空欄の前後から空欄オが明であると判断したうえで、選択肢を吟味することとなる。
第4問 (27点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | 「神アウグストゥスの業績録」 | 標準 |
B | 9 | 仏大統領シラクによる大戦中のユダヤ人迫害に関する演説 | 標準 |
C | 9 | 「訓民正音」と「崔万里等諺文反対上疏文」 | 標準 |
世界史上の指導者による言葉をテーマとした問題で、Aでは主に古代史が、Bでは近現代ヨーロッパ史が、Cでは東アジア史が問われた。Aの問1・問2は史料読解と歴史知識の組合せが必要とされた。Bの問6は史料から演説者の歴史認識を把握する必要があった。特に、空欄イの補充については、自由フランスとヴィシー政府を対置して、現在のフランスを後者の後継と位置づける姿勢を見抜く必要があった。Cの問9、空欄エには西夏が当てはまるが、史料から空欄の内容を推測する必要は無く、選択肢の比較によって解答できる。
第5問 (24点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 6 | パレスチナ分割案 | 標準 |
B | 9 | 年号と政治 | 標準 |
C | 9 | 20世紀の国際関係 | 標準 |
世界史上の国際関係をテーマとして出題された。問1は中東戦争にかかわる年代整序問題。問2の空欄アはイェルサレムである。問3の空欄イは王莽。問4は、文中の「靺鞨の人々や高句麗の遺民」という部分から「ある国」は渤海とわかる。問5は「中国皇帝の前で平伏することを拒否した」とあるから、謁見自体は実現したと考えマカートニーを選ぶ。アマーストは中国式の拝礼を拒否したため、謁見を拒否された。問7は空欄に入れる語と文の組合せを選ぶものだが、易しい。
大学入試センター試験平均点(過去5年分)
年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 | 2016年度 |
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平均点 | 62.97点 | 65.36点 | 67.97点 | 65.44点 | 67.25点 |