物理
総評と分析
グラフの読み取りなど、実験と関連させた出題が多く、文字計算も第1日程に比べて多くなっており、従来のセンター試験に近い出題である。
必要な物理的知識を与え、その後の考察力を試す形式は目新しく、部分点を多くすることできめ細かい採点がされている。また、時事的な内容として質量の定義の変更に関して出題された。
センター試験・試行調査との相違点(第1日程との相違点)
- センター試験に近い印象であり、第1日程に比べて計算量がやや多くなっている。また、考察力を試そうという意図は第1日程と同様であるが、第1日程と異なり、各大問の配点が均等になっている。
問題分析
大問数 | 4 |
---|---|
設問数 | 22 |
解答数 | 27 |
問題量
- 問題記載ページは第1日程より1ページ増え、一方、解答数は1減っている。全体としては、第1日程と同等といえる。
出題分野・出題内容
- 第1問は物理の複数分野(力学、電気、原子、熱)からの小問集合形式による出題。
- 第2問は電流計と倍率器、および電磁力と電磁誘導を用いた質量の測定に関する出題。
- 第3問は弦に生じる定常波、およびくさび型空気層による光の干渉に関する出題。
- 第4問は単振動に関連して、2本のばねを用いた質量の測定に関する出題。
出題形式
- 出題形式、および第2問と第3問では、A、Bに分けることで幅広い出題としていることなど第1日程と同じである。
難易度(全体)
- 第二回試行調査(2018年度実施)、昨年度のセンター本試験、両者と比べてやや難化した。第一日程とは少し雰囲気が変わり、典型的な出題や、従来通り文字計算をする出題が増えた。面倒な計算が少ない点や、グラフの考察や定性的な理解が必要な問題が見られた点は同様であった。
第1問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 5 | 力のモーメントのつり合い | 標準 |
問2 | 5 | 円運動 | 標準 |
問3 | 5 | 電場と電位 | 標準 |
問4 | 5 | コンプトン効果 | 標準 |
問5 | 5 | 定積変化と定圧変化 | やや易 |
第1問は試行調査と同様に、昨年までの小問集合形式を踏襲した。問1は力のモーメントのつり合いの問題で、重力の作用線上に垂直抗力の作用点が存在する必要があり、そのためには薄板の左端がCよりも左側にある必要があることから解答する。問2は問題集などでよく見かける典型的な円運動の問題であった。問3は電場と電位に関する問題で、等電位面と電場(電気力線)が直交することを用いる。問4はコンプトン効果の問題であったが必要な原子分野の式は与えられており、エネルギーの関係式がわかれば解答できた。問5は定積変化と定圧変化の間の関係から、マイヤーの式を導く問題であった。
第2問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 10 | 電流計と電圧計 | やや難 |
B | 15 | 電流にはたらく力・電磁誘導 | 標準 |
第2問は電磁気分野からの出題であった。Aは電流計と電圧計の原理に関する問題。問1が難しく、まず10Vまで測るためには10Vかけたときに10mAの電流がコイルに流れなければならないと気付きたい。その後キルヒホッフの第二法則から抵抗値を求めよう。問2は電圧計に関する知識問題。Bは電流にはたらく力と電磁誘導の問題で、電流、磁場、力、起電力、それぞれしっかりと方向、大きさを理解していなければならなかった。なお、重力の仕事率の単位がWであることだけから、オはわかる。
第3問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 12 | 弦の振動・波の式 | 標準 |
B | 13 | くさび形干渉計 | 標準 |
第3問のAは弦の振動と定常波、波の式、Bはくさび形干渉計に関する問題であった。Aは不必要な情報が多く、情報の取捨選択が重要であった。問1はグラフからある1点の値を読み取るだけ。問2は波の基本式に基本振動の式と問1で読み取った値を代入するだけである(グラフの情報はほとんど使わない)。問3は波の式と定常波に関する問題で、時刻t=0のときの波の様子から波の式が求められ、少し時間を進めたときの波の変位の様子から腹か節かが判断できる。Bの問4は誘導がなくその場で干渉縞の間隔とその他の物理量の関係を導く必要があった。問5は測定値をNで割れば間隔が求まることがポイント。問6は媒質内で波長が短くなることがわかればオも解答できる。問7は波長によって干渉縞の間隔が変わることから解答する。
第4問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
25 | 単振動 | 標準 |
第4問は単振動からの出題であった。問1は簡単な力のつり合いに関する問題で容易。問2も文章に書かれていることをそのまま式にすればよい。問3は物体をxだけ変位させたときにばねBがどれだけ伸びているかを正確に把握する必要があった。問4は単振動のグラフから周期と速さの最大値を求める問題。周期はともかく、速さの最大値は何から求めればよいか迷ってしまうかもしれないが、選択肢を見ると1桁目さえわかればよいのでグラフから振動中心での速さを求めるのがよい。問5アは誘導通りにエネルギー保存を考えればよい。イは、摩擦力は常にすべる速さを小さくする向きにはたらくことから解答する。
大学入試センター試験平均点(過去5年分)
年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 | 2016年度 |
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平均点 | 60.68点 | 56.94点 | 62.42点 | 62.88点 | 61.70点 |