世界史B
総評と分析
昨年の傾向が概ね踏襲され、長文を読解させる問題が多かった。読解だけで解ける問題や、連動式の問題が出題された。
文字の史料が多く、史料以外のリード文も読解しなければならない文章が長かった点は昨年と共通する。文章以外の資料は少なかった。それぞれの難易度は高くないが、読み進めるのに苦労した受験生が多かったのではないかと思われる。
問題分析
大問数 | 4で前年から1つ減少。 |
---|---|
設問数 | 33で前年から1つ減少。 |
解答数 | 33で前年から1つ減少。 |
問題量
- 問題数は微減となったが、文章量は変わっておらず、読むのに時間がかかる。
出題分野・出題内容
- 西洋史・東洋史という観点では、西洋史が多かった。昨年も西洋史が多かったので揺り戻しも予想されたが、むしろさらに西洋史が増加した。東洋史の中では東アジア史の割合が大きく、インドや西アジア等その他の地域からの出題は少なかった。
- 時代別では、どの時代からも満遍なく出題された。昨年は前近代史からの出題が多かったので、バランスが良くなった。
- 分野別では、バランス良く政治史・社会経済史・文化史が出題された。ただし、文化史については前近代史の東洋史が多かった。
出題形式
- 昨年は知識と読解で得た知識の双方を必要とする問題が多く、知識問題と読解問題がうまく融合していたが、今年の史資料問題はほぼ読まなくても解ける実質的な知識問題と、熟読を要するものが混在していた。これは一昨年の傾向に戻っている。
- 文字史料の数が圧倒的に多く、データを扱った表・グラフや図版や地図問題はそれほど多くなかった。
- 本試験としては初めて連動式の問題が出題された。
難易度(全体)
- やや易化。必要な知識水準は変わらないが、史資料の読解の難易度が下がっている。
第1問 (27点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | 中国史上の統治制度に関する議論 | 標準 |
B | 9 | ノルマン=コンクェストを巡る史料 | 標準 |
C | 9 | 近現代イギリスの福祉制度 | 標準 |
世界史上の体制や制度をテーマに、史料を中心とする出題がされた。問1は封建制・郡県制の知識を史料読解と組み合わせて解く。問2、問3、問4はほぼ知識問題。問5は前半を知識、後半を読解で解く。問6は知識問題。正答選択肢の内容がやや難しいが、他選択肢の誤りはわかりやすい。問7はヴィルヘルム2世とビスマルクの関係に関する知識と、リード文中の「1908年」がポイント。問8は「グラッドストン」が手がかり。問9は資料を読まずとも、リード文中の「国営企業の民営化」から解くことができる。
第2問 (23点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 6 | アレクサンドロス大王の評価 | やや易 |
B | 8 | 19世紀のアメリカ合衆国の法律 | 標準 |
C | 9 | 朝鮮戦争に関わる電報 | 標準 |
古代から現代までの西洋史が出題された。問1は読解と知識が要求された。問2は資料を読まなくても正解が出る。問3、資料1がミズーリ協定との判断は容易。問4・問5は本試験初出題の連動式問題。問4は資料2・3の法律が作られた理由・背景を答え、問5でその法律をきっかけとした出来事を答える。先住民強制移住法はジャクソン大統領政権下で制定されたことを想起したい。問6は資料が北朝鮮を支援した東側の電報なので、イが西側の国連軍、ウが中国の人民義勇軍と判断できる。問8は極めて平易なグラフ読取りと知識の組合せ問題。
第3問 (22点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | インド亜大陸における交通の歴史 | 標準 |
B | 6 | 20世紀アメリカにおける交通手段の変化 | 標準 |
C | 7 | 19世紀ロシアの対外関係と鉄道建設 | 標準 |
交通の発達と社会の関係がテーマ。Aの問1、2は単純な知識問題。問3のメモ1は地図を見れば知識がなくとも誤文とわかる。メモ2に関してはデリーのみ「沿岸の大都市」ではないため少し戸惑うものの、正文と判断してよいだろう。Bの問5ではグラフの読解が求められるが、丁寧に取り組めば難しくない。読み取る横軸の範囲を間違えないよう注意したい。Cの問6は資料文中の「ヴィルヘルム帝」から空欄エがドイツであると判断すれば、後は読解で対応できる。問7の藤井さんのメモは「クリミア戦争で得た」という部分で誤文と判断する。
第4問 (28点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 9 | シリア語の世界史的役割 | 標準 |
B | 10 | コロンブスのスペイン語 | 標準 |
C | 9 | 顔真卿と書道の文化史 | 標準 |
世界史上の様々な言語や文字と、それに関わる文化やアイデンティティがテーマとされ、文化史が多く出題された。問1・問7は、文中の空欄に入る語句を想定する単純な知識問題。問2・問4も単純な知識問題だが、問4は昨年度はなかった誤文選択なので、勘違いに注意しよう。問3は文章中の「8世紀後半のイラク」から、アッバース朝を連想したい。問5はポルトガルがコロンブスを支援しなかった理由を推測する問題だが、コロンブスの航海と時系列的に矛盾する選択肢を消去すれば解答できる。問6は文章を踏まえた問題だが、内容を厳密に反映しなくても解答できる。問8は古文復興運動を内容まで理解している必要があった。問9も文章を踏まえた問題だが、知識だけで判別できる。
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