政治・経済
総評と分析
政治分野ではマックス・ヴェーバーなど古典的著作の出題のほか、宇宙条約違反となる事例を考える問題など、読解力・思考力を問う設問が多数を占めた。経済分野では、統計の設問が半減した代わりに模式的なデータが示される設問が増え、数量的な理解力・思考力を問う設問が増えた。
単純な知識問題はわずかしかなく、設問の誘導に沿って考えていく理解力・思考力を問う設問が前年以上に多くなった。例えば政治分野では教科書・資料集に載らない条文等が多く示された。経済分野では模式的なデータを用いた計算問題が目立ち、そうした数量的な理解力・思考力のために得点差が広がるだろう。共通テスト4年目に至り、思考力型の設問が増えてきている。
問題分析
大問数 | 4で前年と同じ。 |
---|---|
設問数 | 30で前年と同じ。 |
解答数 | 30で前年と同じ。 |
問題量
- 設問数は前年と同じ。図表などの資料の分量は前年よりやや増えている。
出題分野・出題内容
- 第1問以外は、一部を除き「倫理、政治・経済」との共通問題。
- 大問の構成は、第1問が政治分野・経済分野の融合問題、第2問が主として政治分野の総合問題、第3問が経済分野の総合問題、第4問が主として国際分野の諸問題。
出題形式
- 正文か誤文を選ぶだけの単純な正誤判定問題の設問数は前年の6から半減し2022年度並みに。そのほかセンター試験から見られた年代順の問題の設問数は前年の1から0へ。
- 該当するものをすべて選ぶ組合せ問題の設問数は前年の4から6へ。設問中の文章の空欄補充問題、図表問題、その他の組合せ問題は例年通り多く出題された。
- 最終第4問では、例年のような明らかな課題探究の設定を採用せず、連想図(商標では「マインドマップ」)が用いられた。
難易度(全体)
- 難問があるほか、やや難しいか解答に時間のかかる資料読解問題が多く見られる。特に経済分野では、平易な設問の中に比較生産費説の設問など難問が一部に見られる。こうした傾向は前年にも見られたが、難易度としては難化したと見られる。
第1問 (26点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
26 | 18歳向け公開講座 | やや難 |
唯一の「政治・経済」独自問題。解答に時間のかかる資料読解問題が目立つ。前年の少年法改正に続き、問1は成人年齢にかかわる出題だが、刑法の責任年齢(14歳)を全く知らないと正答できない。問2・問5は解答に時間がかかるが、設問の誘導に沿って資料を読み解けば正解に至る。政治分野の問3・問4と経済分野の問7は基本的な知識問題で易しいだろう。問6では可処分所得とエンゲル係数の定義の正確な理解が必要。問8は時事問題の要素を含むが、中でも岸田文雄政権下のこども家庭庁(内閣府の外局)の設置は新しい話題であった。
第2問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
25 | 公私の団体・集団 | 標準 |
問1の資料文(マックス・ヴェーバー著『職業としての政治』の抜粋)は国家の強制力という硬派な内容だが、選択肢の記述が平易なので難しくない。問2は雇用保険などの財源の負担者というやや細かな内容で正答率が低いだろう。問3は労働組合法が適用されない公務員職員団体の存在を知っていれば易しい。問4は地方自治の本旨などに関する平易な出題。問5は日本国憲法第20条の条文に沿った設問で、憲法の逐条的理解が求められた。問6・問8はそれぞれ特定商取引法・臓器移植法の改正というマイナーな話題を取り上げたものだが、知識なしでも読解力だけで正解に至る。問7は会社や株主の責任というやや細かな内容で正答率が低いだろう。
第3問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
25 | 経済成長とグローバル化 | やや難 |
問1はGDP統計の基礎を理解するための小麦農家・製粉会社・製パン会社からなる経済というおなじみの設定がそのまま用いられており易しい。問2は三面等価の原則などの基本問題なので易しい。問3は市場の失敗の定義についての平易な設問。問4はGDPデフレーターについての初歩的な設問で、割合の把握が苦手な人でも正答できるだろう。問5は環境問題に関連する設問だが、実際には食塩水の濃度の計算問題を応用したもの。問6は金額が「GDP>民間設備投資>民間部門の在庫」だと知っていれば易しいが、正答率は低いだろう。問7は比較生産費説についての計算問題だが難問と言える。問8は輸入解禁により市場価格が国際価格に引きずられることを知っていないと難しい。
第4問 (24点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
24 | 国際社会と日本 | 標準 |
問1はグロティウス、ホッブズ、ロックの著作の一節に明快なキーワードがないので判別が難しい。問2は「人口オーナス」の知識があれば易しい。問3は第二次所得収支が問われた珍しい出題。問4は高校生への金融教育に関連した出題。問5は宇宙条約の条文と後の記述を照合すれば易しい。問6は経済安全保障推進法を取り上げた時事的な出題であった。
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