物理基礎

総評と分析

会話文形式による問題、数値を直接マークする問題が復活。電磁気の問題が減少し、波動の問題が増加。


出題形式は、昨年同様、第1問は小問集合、第2問、第3問はA、Bの分割のない問題であった。会話文を交えた問題、数値を直接マークする問題が一昨年度から復活し、第3問が昨年の電磁気から今年は波動になった。基本問題を中心とした問題であるが、グラフ読み取り、目新しい設定、数値計算が増加した。

問題分析

大問数 3で昨年と変更なし。
設問数 昨年の13から15に増加。
解答数 昨年の16から17に増加。

問題量

  • 問題記載ページは昨年の15から17に増加。
  • 数値計算の設問は昨年の6から9に増加。
  • グラフ選択の問題は1で昨年と変更なし。

出題分野・出題内容

  • 第1問は、熱1題、力学1題、電気2題の小問集合。
  • 第2問は、力学より浮力、力のつりあい。
  • 第3問は、波動より音の速さ、気柱の共鳴。

出題形式

  • 第1問は小問集合形式。
  • 第2問はA、Bに分けての出題ではなく一つながりの問題であり、会話文形式。
  • 第3問はA、Bに分けての出題ではなく、一つながりの問題。

難易度(全体)

  • 難易度はやや易化。昨年に比べ内容的にも手応えのある問題がやや増えた一方で,数値の計算が容易な設問が増えた。昨年はなかった会話文が第2問で復活し、第3問でも実験・考察を重視する出題となった。思考力・文章読解力・注意力を要する設問、定性的に考察をさせる設問も多く見られた。今年は文字式を答える設問が少なくなったという点でやや取り組みやすかった。

第1問 (16点満点)

配点 出題内容 難易度
問1 4 熱量の保存 やや易
問2 4 運動エネルギーと仕事 やや易
問3 4 電子の電気量と電流 やや易
問4 4 消費電力量と電球の効率 標準

各分野からの小問集合であるが、波動からの出題がなくなり、電磁気から2題の出題であった。問1は熱いスープと冷たい器の間の熱量の保存を考える。数値は計算しやすく設定されているので、確実に得点したい。問2は外力を加えて鉛直上向きに運動させる物体の運動エネルギーと仕事の関係が問われている。速さを用いた公式では答えられない選択肢だったが、内容としては易しいので確実に得点したい。問3はモバイルバッテリーを題材に、充電される電気量を電子の電気量の大きさ(電気素量)と比較して計算する。数値は計算しやすいように設定されていて、選択肢も非現実的な値が多く選びやすかった。問4は白熱電球とLED電球の消費電力量と発光効率に関する計算問題。放出される光エネルギーが共通であることに注意し、電力量の単位Whを利用して比の計算を適切に行う。

第2問 (18点満点)

配点 出題内容 難易度
18 浮力の実験に関する会話 標準

昨年同様、A、B分割での出題とならなかった。物体にはたらく浮力に関する実験を会話文形式で考察する。問1は物体が水中に完全に沈んでいる(物体が容器の底についているとは限らない)場合の浮力を問う設問。公式通り解答できるので確実に得点したい。問2は物体が水面上に吊るされている状態から、物体を下降させ、物体が完全に沈むまでの過程を考える設問。一連の過程に関するばねはかりの値がグラフとして与えられており、グラフから物体の重さと浮力の大きさの最大値を読み取って考える必要がある。力のつり合いの式を適切に立式した上で数値との対応を解答しなければならない点がやや難しい。問3は同じ深さに対応する図2の2つのグラフの値を縦軸横軸に取り直したグラフを選ばせる問題である。浮力の反作用として、水と容器が物体から受ける力に注意してキッチンはかりが受ける垂直抗力を考え、問2の立式を活用すれば図2を用いなくても直線関係であることがわかる。なお、グラフの縦軸は力の単位Nであり、横軸は質量の単位kgであるが、これは解答上本質的な違いはない。問4は沈めていく物体の形状を変えた場合にばねはかりの値の変化がどうなるかを考える設問。ばねはかりの値が直線的に減少していることから、浮力の大きさが深さに比例して大きくなることに気づく必要がある。深さのみで浮力の大きさが変化しなければならないので、断面積が深さ方向に一様な円柱を選ばなければならない。立方体は頂点に糸が結び付けられているため不適となる。問5は物体が容器の底にある場合である。水の有無、すなわち浮力の有無で物体にはたらく垂直抗力がどうなるかを力のつり合いから考察する。最後の設問ではあるが、内容としてはやや易しいので取りこぼしがないようにしたい。

第3問 (16点満点)

配点 出題内容 難易度
16 音波の基礎知識・音速測定の実験と考察 標準

昨年同様、一分野にテーマを絞った出題であり、今年は波動から音速測定に関する3種類の実験が取り上げられた。問1は音速と波の基本式に関する確認問題であり、確実に得点したい。具体的な値・表式を覚えている必要はないが、温度変化による音速と波長の定性的な変化を解答する必要がある。問2・問3では太鼓とストップウォッチを用いて時間を測定し、音速を求める。問2の計算は易しいので間違えないようにしたいが、得られる値は典型的な340m/sではない。問3では問2の測定誤差を考察させるやや目新しい問題。昨年もあった適当なものをすべて選ぶ形式で出題された。「教科書に書かれている式から求めた値」が340m/sであることを覚えていなくても解けるが、数値が念頭にあった方が設定をイメージしやすいだろう。実際の値より小さな音速の値が得られたことから、測定時間が長くなっていることを表す選択肢を選ぶ必要がある。問4では同じ時間間隔で鳴る2つのメトロノームの距離を離していき、両者の音が同時に聞こえる距離とメトロノームの鳴る周期から音速を求めるが、これも340m/sではない。計算は易しいが珍しい設定に戸惑うかもしれない。問5では閉管の共鳴を利用して音速を求める。問6は音波の可聴域を題材にした設問であるが、知識そのものを問う設問ではなく、波の基本式をもとに考えればよい。最後の設問ではあるが、内容としてはやや易しいので取りこぼしがないようにしたい。

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