数学I・数学A

総評と分析

昨年より設定も簡潔になっており、解きやすくなった。一部に難しめの設問もあるが、全体としては標準的な難易度である。


第1問〔1〕は、近年の傾向通りセンター試験に類似した出題である。第1問〔2〕は、三角比の問題であるが、影が坂に落ちているところが少し考えさせられる。第2問〔1〕は台形の辺上を動く2点で定まる三角形の面積を考える問題であるが、2018年に実施された試行調査に類似の問題である。選択問題である第3問以降は、昨年よりもさらに解きやすくなったという印象である。受験生の実力が素直に反映されるセットと思われる。

問題分析

大問数 5で昨年と同じ。
設問数 24で昨年より4増。
解答数 95で昨年より1減。

問題量

  • 問題文の分量は昨年よりも減少し、計算量も全体としてはあまり多くない。また、問題の設定もすっきりとしている。

出題分野・出題内容

  • 第1問〔1〕は数と式からの出題である。誘導に乗ることができれば難しくない。
  • 第1問〔2〕は三角比の問題である。影が坂道に落ちているところが少々戸惑うが、図も与えられているので、それを用いて長さを書き込んでいけばよい。
  • 第2問〔1〕は台形の辺上を動く点で定まる三角形の面積を題材にした2次関数の問題である。数学Bのベクトルの知識があると面積が楽に求まる。
  • 第2問〔2〕はデータの分析からの出題である。いわゆる「厚底靴」の登場によりマラソンのタイムがどう変化したかをネタにしている。(1)(ⅲ)は統計的な考え方(zシグマ)を問うている。
  • 第3問は箱の中から文字が書かれたカードを取り出すことを考える確率の問題である。カードの種類が2、3、4と増えていくが、誘導が丁寧なのでそこまで難しくはない。
  • 第4問は整数の性質の問題である。n進法の下3桁の表示がどのようになるかを考える。これも誘導に乗れば比較的容易である。
  • 第5問は図形の性質の問題である。星形の図形を題材としているが、メネラウスの定理、方べきの定理と用いるべき手法が誘導で与えられているので、解法に詰まるところはないだろう。

出題形式

  • 答えを選択肢から選ぶ問題が第1問で6、第2問で6、第4問で1、第5問で7であったが、それ以外は数値を求めさせる問題である。

難易度(全体)

  • 全体を通して共通テストとして標準的な難易度である。よって、昨年と同程度だといえる。

第1問 (30点満点)

配点 出題内容 難易度
〔1〕 10 数と式 やや易
〔2〕 20 図形と計量 標準

〔1〕は無理数の整数部分、分母の有理化といったおなじみの内容に加えて、小数第1位、小数第2位の数字について出題された。誘導が丁寧であるため、できるだけ素早くこなしたい。〔2〕は与えられた角度を用いて、電柱の長さと影の長さの関係を考える問題である。共通テストらしい問題であり、用いる事項は三角比の基礎事項である。最後の設問は指定された形にするのに戸惑うだろう。一方、正弦定理、余弦定理、三角形の面積公式が出題されなかったことが珍しい。

第2問 (30点満点)

配点 出題内容 難易度
〔1〕 15 2次関数 標準
〔2〕 15 データの分析 標準

昨年度は〔1〕がデータの分析、〔2〕が2次関数の出題でその前2年間と逆転していたが、今年度は元に戻った。〔1〕は台形の周上を動く2つの動点と台形の頂点の1つで作られる三角形の面積について考える問題。過去3年間の2次関数の出題と比して現実色が少ない、いってみれば普通の数学の問題である。〔2〕は陸上競技の長距離の選手別ベストタイムを題材とする問題。データの変換が全面に出てきたのが特徴の一つである。

第3問 (20点満点)

配点 出題内容 難易度
20 場合の数・確率 標準

典型的なテーマであり、誘導も丁寧である。ただ、問題量がやや多いため、ケアレスミスをしないように落ちついて解き進めることが重要である。そして、場合の数の比重が高いことと、条件付き確率は出題されなかったことが特徴的である。

第4問 (20点満点)

配点 出題内容 難易度
20 整数の性質 標準

n進法を10進法に変換する方法を理解していれば、序盤は解答に迷うことはない。最後の2つは1次不定方程式を利用して考える問題である。特殊解を見つけるのには苦労すると思われる。普段からの練習量を問われるだろう。最後は、1次不定方程式の利用とはなるが、整数の特性に着目すると容易に選択できるだろう。ただ、1次不定方程式の型にはまった解き方しか理解していない場合は、時間を費やすことになるのかもしれない。解き方だけではなく、整数の性質についた理解の深さが問われる問題である。

第5問 (20点満点)

配点 出題内容 難易度
20 図形の性質 標準

方べきの定理と円の関係については、2021年の本試験にて出題がある。誘導が丁寧であり、順に解答をしやすい問題となっている。メネラウスの定理を利用する問題は、与えられている図を使うよりも、自分で必要な場所を書き出してみることで、解答しやすくなる。方べきの定理を利用した円と点の位置関係の問題は、公式だけではなく、大小関係と点と円の位置関係までの理解を深めておかないとならないだろう。単元の理解力を求めた問題であるともいえる。

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