数学II・数学B
総評と分析
数値の計算よりも本質的な理解を問う出題が多く、理解の深さが明暗を分ける。また過去問にとらわれず、全分野を満遍なく学習していることも重要であった。
第1問〔2〕の今までに出題されていない「いろいろな式」単元からの出題や、適切な図を選ぶ問題が多く出題されるなど、今までと異なる出題傾向であった。全般に計算量は多くない反面、本質的な理解をしていなければ歯が立たない設問も多い。理解の深さによって難易度が大きく変わる出題であった。
問題分析
大問数 | 大問数5で昨年と同じ。 |
---|---|
設問数 | 設問数は25で昨年より1増。 |
解答数 | 解答数は105で昨年より10増。 |
問題量
- 少なめの問題量である。一昨年までは第3問~第5問は手間がかかるケースが多かったのだが、ここ2年は控えめの難易度である。
出題分野・出題内容
- 第1問〔1〕は指数・対数関数からの出題で、指数・対数そのものよりも、関数のグラフや領域などの座標平面に関係する部分に注目するのが主題であった。
- 第1問〔2〕はいろいろな式からの出題である。過去に剰余の定理や整式の割り算、相加・相乗平均の関係式などが部分部分で出題されることはあったが、数学Ⅱ・数学Bの本試験で主な分野として出題されたのは初めてである(ただし、追試験では2023年度に出題されている)。
- 第2問は微分法・積分法からの出題で、本年度は2つのパートに分かれていないのが特徴である。標準的な内容であるが、択一式の問題が非常に多くあり、選択肢を読むのに時間がかかるだろう。関数についての本質を理解していると解きやすかったと思われる。
- 第3問は確率分布と統計的な推測からの出題である。ある地域における晴れの日についての確率分布を題材にし、(1)は信頼区間を求めるオーソドックスな問題であった。一方の(2)は見慣れない問題であり、戸惑った受験生も多かっただろう。
- 第4問は数列からの出題である。(1)、(2)の数列の漸化式から一般項を求める問題はオーソドックスである。(3)は数学的帰納法に関する問題だが、論証自体よりも考え方に注目した問題であり、かなりの考察力が必要である。
- 第5問は空間ベクトルからの出題である。(1)は空間内の直線上の点と原点との距離の最小値、(2)は2直線の距離を求める問題である。類題経験が大きくものをいう。
出題形式
- 答えを選択肢から選ぶ問題が第1問で9、第2問で12、第3問で5、第4問で2、第5問で2であり、それ以外は数値を求めさせる問題である。特に必答問題の第1問、第2問は選択肢から選ぶ問題が多く、困惑した受験生が多くいただろう。
難易度(全体)
- 易しくなった昨年と同様取り組みやすい。分量も時間に対して少なめであるうえに、問題設定を読み取るのに苦戦する箇所が昨年よりも少ない。第1問、第2問は比較的取り組みやすい。一昨年までは第3問~第5問は手間がかかるケースが多かったのだが、昨年は難易度が控えめとなり、本年度も同様である。昨年と異なり、全体として大問・小問ごとの難易の差が小さい。選択肢を選ぶ問題が頻繁に登場し、そのことが受験生を困惑させる点は改善を要する。
第1問 (30点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
[1] | 15 | 対数関数 | やや易 |
[2] | 15 | 式と証明 | 標準 |
昨年までは、三角関数と指数関数・対数関数、図形と式の中からが出題されるケースがほとんどであったが、本年度は式と証明からの出題であり、珍しい。〔1〕の対数関数の(1)は非常に基本的である。(2)では今回の問題で唯一、図形と式の要素を含むが、図形と式の知識や経験は殆ど要求されない。慌てずに、正しいグラフを選択することである。〔2〕は本試では出題されることがほぼない式と証明からの出題である。内容としては基本的であるが、(2)の選択肢が長いので、試験場で焦ると誤ったものを選びかねない。(3)も直前のヒントを利用すれば、計算も楽であり、特に難しい要素はない。
第2問 (30点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
30 | 微分法・積分法 | 標準 |
第2問は2つのパートに分かれているケースが多いのだが、本年度は分かれていない。内容としても基本的である。(1)、(2)は誘導に従って解いていけば、易しい。(1)の極大値、極小値は、実際には増減表は考えず、空欄の形状で極大か極小かを判断した受験生が多かったものと思われる。(2)のグラフを選択する際は、問題文に書かれていることを用いる。(3)では様々な文字が登場し、試験場では焦るかもしれないが、特に難しい要素はない。最後の空欄ではqに適当な値を代入することに気づきたい。なお、本問題では、計算はかなり簡単である。
第3問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 確率分布と統計的な推測 | 標準 |
ある地域における晴れの日についての確率分布の問題である。 (1)は実際の天気を標本抽出と見なし、母平均の95%の信頼区間を求める問題である。 オーソドックスな問題であり、確実に得点したい。 (2)はちょうど3回続けて日曜日が晴れとなる頻度についての問題である。 見慣れない題材だが、k=4、5の場合は列挙して考えることができる。 k=300については、誘導で述べられている事実を把握し計算することになるが、計算ミスが発生しやすく注意が必要である。
第4問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 数列 | 標準 |
昨年に引き続き、漸化式の問題である。昨年と異なり、文章題という要素が全くないため、受験生にとっては取り掛かりやすい。(1)、(2)は非常に基本的である。(3)で、一見、複雑そうな式が現れるので、戸惑うかもしれない。(ⅰ)、(ⅱ)は具体的な値を求めるだけなので、非常に易しい。(ⅲ)は数学的帰納法が登場するかと身構えてしまうかもしれないが、実際には論証的な要素は皆無である。(ⅳ)では(ⅱ)、(ⅲ)をヒントに正しい選択肢を選ぶ必要がある。
第5問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 空間ベクトル | 標準 |
本年度も昨年度と同様、空間ベクトルから出題された。「おなじみの題材」ではあるのだが、意外に類題経験のない受験者が多かったかもしれない。(1)、(2)は基本的な問いである。つまずく要素は全く無い。(3)では空欄シがヒントになっている。媒介変数を用いてP,Qの座標を表して、内積計算を実行すれば、計算は簡単である。
平均点(過去5年分)
年度 | 2023年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 | 2019年度 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 61.48点 | 43.06点 | 59.93点 | 49.03点 | 53.21点 |
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