生物
総評と分析
特定のテーマに関する文章と複数の資料を解析させる問題が分野横断的に出題され、知識や読解力、思考力が総合的に試された。
知識問題が増え、実験考察や資料解析だけでなくより総合的な理解度を試す内容であった。文字式の選択やシミュレーション実験など様々な形式の出題がみられた。文章量やレイアウトが適切で読みやすく取り組みやすかった。
問題分析
大問数 | 大問数は6で、昨年と同様。 |
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設問数 | 設問数は20で、昨年より3減少。 |
解答数 | 解答数は26で、昨年より2減少。 |
問題量
- 大問数は昨年と同様だが、設問数・解答数が昨年より減少し、実質の問題ページ数も昨年より1ページ減少して28ページとなったため、分量は昨年より減少した。
出題分野・出題内容
- 多くの大問で、観察材料や特定のテーマを題材として、複数の分野から多くの視点が盛り込まれて出題された。
- ミクロな視点とマクロな視点を関連させた内容が扱われ、広い分野から大きな偏りなく出題された。
- 単純な知識問題が増えたものの、知識を活用する問題や資料解析、実験考察問題が中心であった。
- 実験考察において、データを示す文字式の選択や、シミュレーションの実験など、目新しい問題がみられた。
出題形式
- A・Bの中問に分かれている大問は第6問のみであった。
- 大問ごとに、設問数は3~4問、配点は14〜20点と、昨年よりばらつきは減少した。
- 昨年同様、選択肢のグループを容易に分割することができる問題がみられた。
難易度(全体)
- 易化。設問数と解答数が減少し、知識問題と考察問題がバランス良く出題され、比較的取り組みやすい内容であった。さらに、複数の解答の組合せを選ぶ問題では、解答の一部のみが正解でも点数を与えるなど、得点率を上げるための工夫がみられた。
第1問 (14点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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14 | 糖代謝・オペロン | 標準 |
生命現象と物質の分野から、代謝と遺伝子の発現について出題された。問1はエネルギー代謝に関する基本的な知識問題。呼吸と発酵の過程を理解していれば解答できる。問2はキシロースオペロンに関する考察問題。ラクトースオペロンに関する知識を応用して資料を読み解く必要があった。問3はキシロースオペロンの発現制御について、仮説の検証実験を考えさせる、共通テストらしい問題。仮説の内容を反映できる実験を素直に選びたい。
第2問 (17点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
17 | 生体膜・物質輸送 | やや易 |
生物の特徴および生物の環境応答から、分野横断的に出題された。問1は生体膜と膜タンパク質の性質に関する単純な知識問題。問2は植物の気孔の開口に関する考察問題。カリウムチャネルの働きに関する文章を読解すれば解答できる。問3は静止電位と活動電位の発生の仕組みに関する基本的な知識問題。問4はニューロンにおける興奮の伝導と伝達に関する文章の空欄補充問題。基本的な知識に基づいて解答できる。
第3問 (16点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
16 | 筋収縮・筋肉の分化 | やや難 |
筋肉を題材に、筋収縮の仕組みを問う知識問題と実験考察問題、発生における筋肉の分化に関連する実験考察問題が出題された。多くの実験内容を把握する必要があったため、実験内容の読み取りに時間がかかると難しく感じるかもしれない。問1は筋収縮についての基本的な知識問題。問2は筋収縮の仕組みについての実験考察問題。7個の実験結果を処理する必要がある。筋小胞体の役割と有無で考えていく。問3は筋肉の発生についての実験考察問題。体節の向きは分化に影響しないことを実験から読み取る必要がある。
第4問 (19点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
19 | 有性生殖・植物の環境応答 | やや難 |
ジャガイモの塊茎形成を題材に、学校での探究活動をなぞる形で実験考察問題が出題された。データ解析のために文字式を立式する問題は共通テストでは珍しく、苦戦するかもしれない。問1は有性生殖の特徴について、個体群や遺伝子、適応度の観点からの知識問題。問2は塊茎形成に対する光中断の条件を考える資料解析問題。花芽形成と同じであることに気づけば難しくない。問3は同化した有機物の分配比の変化を解析する実験考察問題。同化物はデンプン以外の物質も含む。数式の立式では、全体の変化量と分配量の変化の比で考える。
第5問 (14点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
14 | 植生と物質生産 | 標準 |
森林の農耕地への転用を題材に、生態系の物質生産について出題された。問1は森林の物質生産の特徴を基に、適切なグラフを選択する問題。同化器官と非同化器官のグラフは、森林では生産構造図の広葉型、牧草地ではイネ科型の形を示すと推察できる。また、同化器官が多くみられる高さで、相対照度は大きく低下する。問2は有機物の蓄積量に関する表の読み取り問題。問3は農耕地の土壌有機物量の変化に関する考察問題。土壌有機物量が減少する、という文意をふまえれば難しくない。
第6問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 10 | 動物の系統分類 | 標準 |
B | 10 | 進化の仕組み | 標準 |
A:動物の系統に関する知識問題。問1は動物に共通する特徴を問う知識問題。問2は具体的な生物種の属するグループを推察する問題。B:遺伝情報の集団内における伝達を、シミュレーションを通して考察する問題。問3はシミュレーションの内容に関する考察問題。落ち着いて手順を理解し、図を基に考えれば解答できる。問4はシミュレーションの結果をふまえた知識問題。
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