歴史総合,日本史探究

総評と分析

昨年度共通テスト「日本史B」と比較して、歴史総合が大問単位で出題されたが、全体的に思考力・判断力を測る問題が多い傾向は変わらない。


歴史総合が第1問で出題され、日本史探究では学習しない世界史的な知識が求められるものが多かった。日本史探究は第2問以降で出題され、史料や図表などの読み取り問題の比重は高く、知識問題でも思考を伴うものが出題された。

問題分析

大問数 6
設問数 33
解答数 33

問題量

  • 分量的には昨年の「日本史B」から1問増え、読み取り問題も同様に出題され、解答に時間を要する。

出題分野・出題内容

  • 出題分野は、第1問は歴史総合、第2問以降はそれぞれ日本の通史・古代・中世・近世・近現代史であった。
  • 第1問は、主に19~20世紀についての出題が中心であった。
  • 出題内容は、政治史、外交史、社会・経済史、文化史が、満遍なく出題された。
  • 第6問は松本清張の人物史をテーマとし、また長谷川町子の漫画「意地悪ばあさん」が掲載された。

出題形式

  • 2023・2024年の「日本史B」で2年連続で出題されていた8択問題や、2024年の「日本史B」で出題された2つの文と3つの史料を組み合わせる6択問題は見られなかった。
  • 2023年の「日本史B」まで出題されていた、最後の設問でリード文を踏まえて正誤を判断する大問が復活した。
  • 史料は現代語訳されたものの掲載数が、昨年から大幅に増加した。

難易度(全体)

  • 昨年の「日本史B」に比べてやや難化した。新科目である歴史総合では日本史探究で学習しない世界史的な知識を問う問題の出題が多く、日本史探究でも判断に迷う問題が散見された。それに加えて、思考力・判断力を測る出題傾向は続いており、時間配分には苦労しただろう。

第1問 (25点満点)

配点 出題内容 難易度
A 6  国際関係における「境界」 標準
B 9 疫病の流行と「境界」 標準
C 10 「境界」と人やモノの移動 標準

「歴史上における境界」を主題として、18世紀末~20世紀の東アジアやヨーロッパを中心とした歴史総合範囲の出題。問1のa・bは、時期に注意した上で地図における場所の判断が必要になる。bの上海が開港されたのはアヘン戦争後の南京条約による。「18世紀末」の時点で利用されていた港は、aの広州。問3は穀物法を知っていたかどうか。問5はコレラ流行とアメリカ軍艦の来港の関係を考える問題であったが、比較的判断しやすかった。問7の並び替え問題は、いずれも日本史探究では扱わない内容であり、歴史総合の学習成果が問われた。

第2問 (15点満点)

配点 出題内容 難易度
A 6 近世~近代の政治・外交 標準
B 9 古代~中世の外交・文化 標準

「菓子の歴史」をテーマに、古代~近代の政治・外交・文化が出題された。リード文を踏まえて正誤を判断する問題が出題され、リード文全体を丁寧に読む必要があった。問1は当時が田沼政権であることを知っておく必要があった。問2の「あ」は「欧州製菓の輸入途絶」の背景を考えることが求められた。問3の②は古代と中世の建築様式の内容について整理できているかが問われた。問4は中世の内容である②と④に絞った上で、禅宗がどの時期から広まったかを考える。問5はリード文も踏まえた正誤問題。②の「カステラ」の判断がやや迷うか。

第3問 (15点満点)

配点 出題内容 難易度
15 古代の外交・文化 やや難

「古代の外交と文化の関わり」をテーマにした出題で、古代の東アジア情勢に関する知識が重要であった。問1の④は、馬具が古墳時代に倭へ導入されたことを想起したい。問2は②・④の知識が細かく、③を確実に正文と判断する。問3は、渤海が7世紀末~10世紀初めに存在したという知識を前提に、資料2の「聖武天皇」に着目する。問4の「あ」は、九州が軍団廃止の対象外であったというやや細かい知識が問われた。問5はサクラさんの図について、天平文化期の螺鈿紫檀五絃琵琶であるため、国風文化のメモとは時期が異なると判断する。

第4問 (15点満点)

配点 出題内容 難易度
A 6 中世の政治・外交 やや難
B 9 中世の政治・経済・文化 やや難

「中世の武士」をテーマにした出題。政治・経済・文化に関する出題が見られた。問2は図の防塁に着目し、防塁が文永の役後に構築されたことを想起する必要があった。問3のイは資料3の「魔法」が何を指すかわからない上、「キリスト教」が該当するかも確定できない。そのため、少々細かい知識であるが、「黄檗宗」が江戸時代に伝えられたものであることをわかっている必要があった。問4は②と③のどちらが入るかで悩んだだろう。リード文の近世の「統一権力」などから、貫高制を示す③は該当せず、撰銭に関する②が該当する。

第5問 (15点満点)

配点 出題内容 難易度
A 6 近世の政治・社会 標準
B 9 近世の政治・社会 標準

「近世の村」をテーマとする出題。問1のXは、刀狩令により百姓から武器が没収されたことを想起したい。問2の④の幕府による農民統制は、田畑永代売買の禁止令などが出されていることから誤り。問4の「あ」は1783年の浅間山の噴火を想起したい。「い」は被災後に村高の半分以上が荒地となり、「荒地は年貢賦課の対象外」とあることから納める年貢は減っている。問5は、検見法に代えて定免法を採用した時期から判断したい。なお、定免法の採用後も年貢率は長期的には変動しており、19世紀初頭まで固定されたわけではないことに注意。

第6問 (15点満点)

配点 出題内容 難易度
15 近現代の政治・経済・文化 標準

松本清張の人物史をテーマとし、近現代の政治・経済・文化が問われた。問1の「い」は韓国併合が1910年の出来事であり、時期が合わない。資料1に「総督府」とあるが、これは朝鮮総督府ではないことに注意が必要である。問3のⅢは大正時代末期のことだが、時期の判断がやや難しい。問4の④は、サンフランシスコ平和条約発効による占領終了の約3か月後であり、やや難。問5は長谷川町子の漫画を用いて、疑問に対する適切な調べ方を選ぶ思考力を問う出題であった。Y・Zは判断に迷うが、Yは小泉純一郎内閣を想起して誤りと判断したい。

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