歴史総合,世界史探究
総評と分析
昨年の「世界史B」と比較して、第1問が歴史総合となって日本史に関連する出題が増えた。その他には大きな変化が見られなかった。
第1問は新たに導入された歴史総合からの出題となり、日本史を絡めた小問が多かった。その他の面ではあまり変化が見られず、大量の史資料を読解させるという従来の共通テストや2022試作問題の傾向が踏襲された。歴史学の手法に関する問題がやや多かった。
問題分析
大問数 | 5 |
---|---|
設問数 | 32 |
解答数 | 32 |
問題量
- 昨年の世界史Bや2022試作問題よりも問題数が1・2問程度少ないが、 史資料が多いために分量の変化は見られない。
出題分野・出題内容
- 西洋史・東洋史という観点では、2022試作問題と同様の傾向で、歴史総合が存在している分、日本史を含んだ東洋史の比重が高い。第2問以降だけで比較すると、西洋・東洋の出題数はほぼ同じでバランスがとれている。
- 時代別では、前近代と近現代がバランスよく出題された。裏を返せば、近現代からの出題が第1問の歴史総合部分に偏っており、第2問以降は前近代からの出題がやや多い。
- 分野別では、文化史からの出題がやや少なかったが、目立った特徴は見られなかった。
出題形式
- 4択の正誤判定問題が減少し、正誤の組合せや正しい文の組合せを解答する種類の問題が増加した。
- 解答に知識と読解力の両方が必要な問題が多く、知識のみで解ける問題が少なかった。
- 昨年の「世界史B」に比べて文字史料が減少し、地図・グラフ・表・図版が増えて、史資料の種類が豊富になった。また、生徒のメモやレポートという形で新規の情報が示されるパターンが増えた。
- 昨年の「世界史B」にあった連動式の問題は出題されなかった。
難易度(全体)
- 昨年の世界史Bと比較して同程度。要求される知識水準は易しくなっているが、歴史総合の導入により日本史の要素が増加したことや、歴史学の手法に関する問いが増加したことの影響があると思われる。なお、既卒生の多くが旧世界史Bを受験するため、平均点自体は下がる可能性が高い。
第1問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 13 | 政治家・官僚・軍人の装い | 標準 |
B | 12 | 女性の装い | 標準 |
歴史上の人々の装いについて、様々な史資料を用いて出題された。問1~問3は知識問題で、読解はほとんど必要ない。問4はグラフ問題だが、力織機と紡績機の役割の違いや帝国議会開設の時期を知っておく必要があった。問5のモガの髪型は細かい知識で、消去しにくい。選択肢②をピンポイントで正文と判断すべきだろう。問6は資料が短く、必要とされる知識も易しい。問7はパネル2にイスラームの教義やイラン=イスラーム革命の説明があるため、知識なしでも正解を導ける。問8の年代並び替えは時事に近い現代の内容を含み、やや戸惑う。
第2問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 6 | カイロの状況についての年代記 | 標準 |
B | 5 | ペテルブルクの歴史 | やや易 |
C | 9 | バンコクの変容 | やや難 |
世界史上の都市の歴史に関する生徒たちの発表を題材にした問題。Aは資料内の「アズハル=モスク」を手がかりに都市名を判断する。問題文の「14世紀半ば」という指定を見落とさなければ難しくはない。Bも準備メモ後半の内容から都市名を特定すれば、問題自体は知識で解ける。問4の文化史は、トスカネリとコロンブスのつながりも判断材料にできる。問5、アユタヤ朝がコンバウン朝に滅ぼされたという知識はやや細かいか。問6は会話内容の読み取りとそれに基づく推察が求められる。問7は読み取りと知識の両方を必要とする問題。
第3問 (21点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 6 | アクティウムの海戦の記録とその背景 | 標準 |
B | 5 | 五経の註疏の継承と官僚の登用制度 | 標準 |
C | 10 | イギリスのインド支配と古代インド史研究 | 標準 |
歴史資料の持つ文脈や背景をテーマに、文字史料中心に出題された。問2、5は知識、その他は読解も組合せて解く。問1、3は知識だけでも解答可能。問7の後半は、資料の書かれた時期を推測し、同時期の中国の政治状況を選ぶ。「スタイン氏が初めて~8か国連合軍が都を占領した時」(=1900年)と「今日までの30年にわたるスタイン氏の調査」から年代は1930年と推測できる。ここからZの「全国の統一的支配の実現を目指して、北伐が進められていた。」を選ぶが、北伐は1928年に終了しているので戸惑った受験生もいたかもしれない。
第4問 (16点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 7 | 大陸を越えた綿花の貿易 | やや易 |
B | 9 | ヴァイキングの活動 | 標準 |
グラフと地図の読み取り問題が出題された。問1・問2は19世紀後半のイギリスによる綿花輸入量についてのグラフの読み取りと知識を組合せて解く問題で、両問とも易しい。問3~問5はヴァイキングの活動の地図に関する問題。問3は中世ヨーロッパについての知識があれば、地図を見なくても解ける。問4は、北米にある遺跡が米大陸外から来た人たちのものだという根拠を選ぶ問題。空欄前後だけを見るとしぼりきれないが、会話文を丁寧に読めば「家畜を飼っていた形跡がない」とあるので、牛や馬の飼育についての選択肢を消去できる。
第5問 (18点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
18 | 政治が食文化に与えた影響 | 標準 |
最後に主題を読み取らせる問題。問1は7世紀前半の朝鮮半島で、ウは返済時の利息を示す規定の有無に関するメモ1内の記述から判断できる。問2は16世紀のイングランドという条件に注意する。問3は19世紀前半のアメリカ合衆国史で、先住民の伝統料理が連邦政府の食料政策を契機として作り出された経緯を読み取る必要がある。問4は第一次世界大戦中のドイツで、総力戦を前提知識としつつ、表の読解から正誤を判断する。問5は政治権力という言葉が各資料にて国家・政府・国王などに置換されているので、迷うことはない。
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