地学基礎
総評と分析
昨年度共通テストと比較して、図表を読み取る問題が大幅に増加した一方で、計算問題が出題されなかった。
第1問の出題内容は全分野からの総合問題となった。昨年に比べ図表の読み取り問題が大幅に増加した。第1問で地球分野が1題減少した一方、宇宙分野が1題増加し計4題となった。また、中学理科で学ぶ天の川銀河の構造について1題出題された。
問題分析
大問数 | 4 |
---|---|
設問数 | 15 |
解答数 | 15 |
問題量
- 図表や写真を用いた問題は倍増して10題になり、1ページに収まらない設問が増えたことで全体のページ数も増加した。大問数、設問数、解答数ともに昨年と同じで、全体の文章量は昨年よりやや増加したが、問題量は時間に対して適量である。
出題分野・出題内容
- 第1問は天文・地球・大気と幅広い分野から出題された。第2問は大気・海洋分野、第3問は宇宙分野、第4問は自然災害と地球環境の問題だった。
- 各大問の設問数は昨年と同じだが、第1問で地球分野に加えて太陽系の天体について1題出題されたことで、宇宙分野からの出題が4題に増加した。
- 中学理科では扱うものの、教科書によっては高校地学基礎では扱わない天の川銀河の構造について出題された。
出題形式
- 8択形式が1題、6択形式が2題で、それ以外は全て4択形式の問題だった。
- 図表を用いた問題が倍増し、誤りの選択肢がわかりやすい問題が多かった。
- 数値を扱う問題は出題されたが、数値計算を要する問題は出題されなかった。
難易度(全体)
- やや易化。図表を用いる問題が大幅に増加し、文章量も増えたものの、細かい知識を要求されずに、基本的な知識と図表や文章の読み取りからの論理的考察のみを問う問題が多く、計算問題も出題されなかったので、選択肢を選びやすい問題が多かった。
第1問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 7 | 太陽系天体の大気、プレートの衝突帯 | 標準 |
B | 7 | 火成岩の組織と組成、ベスビアス火山の噴火 | やや易 |
C | 6 | 堆積構造の写真と堆積時の水流の方向の復元 | やや易 |
Aの問1は太陽系の主な天体の大気の特徴についての正誤問題で、各天体の大気についての知識に加え、各天体の質量と太陽からの距離についての読図・考察もできる。問2はプレートの衝突帯についての基楚知識問題である。Bの問3は表で与えられた化学組成と問題文で与えられた岩石組織から、対応する火成岩を選べばよい。問4は成層圏の高度と火砕流についての知識問題である。Cは4枚の露頭の写真から、問5は堆積構造3つに対応するものを、問6は砕屑物を運搬・堆積させた水流の方向を復元するのに利用できるものを選ぶ問題である。
第2問 (10点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
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10 | 放射冷却、水蒸気の南北輸送 | やや易 |
問1は放射冷却のしくみと放射冷却が起こりやすい天気図を選ぶ問題である。問2は降水量と蒸発量の緯度分布のグラフから大気中の水蒸気輸送の向きを判断する問題で、低緯度ではハドレー循環によって大気中の水蒸気が亜熱帯高圧帯から熱帯収束帯に向かって運ばれていることに注意する。問3は外洋の平均塩分の値と、結氷時に周囲の海水に塩類が取り残されることで起こる塩分上昇についての知識問題である。
第3問 (10点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 7 | 宇宙の進化 | やや易 |
B | 3 | 銀河系の構造と地球からの見え方 | 標準 |
Aの問1は宇宙の進化と、宇宙の晴れ上がりと太陽系の誕生の時代についての、問2は宇宙の晴れ上がりの原因についての知識問題である。現行の学習指導要領では宇宙分野の削減にともなって、宇宙の進化は非常に出題されやすくなっている。一方で、Bの問3では現行の学習指導要領で削除されたことで教科書によっては扱いのない銀河系の構造について出題されたが、銀河系に属する星々の地球から見た位置関係は中学理科でも触れる内容なので、昨年度の第3問の問3や、一昨年度の第3問の問4のように、今後も出題される可能性がある。
第4問 (10点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
10 | 自然災害や自然現象と人為起源の環境問題 | やや難 |
問1は地学的現象の時間・空間スケールを示した模式図から、各現象に該当するものを選ぶ読図問題である。受験生の多くは実際に体験や見聞きしたことのある現象と思われるので、感覚的に時間スケールから判断できるだろう。問2は津波堆積物を含む柱状図についての誤文選択問題で、砂層の厚さは津波の規模に比例し、泥層の厚さは堆積期間に比例することから、砂層の厚さと泥層の厚さには比例関係はない。問3は余震域と地震災害についての問題で、余震は本震の後に引き続き起こる地震であり、余震の規模が本震より小さいとは限らない。
平均点(過去5年分)
年度 | 2024年度 | 2023年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 35.56点 | 35.03点 | 35.47点 | 33.52点 | 27.03点 |
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