物理
総評と分析
昨年度共通テストと比較して、大問をAとBに分けての出題が復活するなど分量が増えている。考察力を試す出題が多いのは昨年同様。
まず、昨年度と比べて読むべき文章量や設問数が増えたのが目を引く。また、昨年同様、実験および実験データの分析など、探究活動を意識したと思われる出題が目立った。図およびグラフ選択の問が昨年の1から6に増えているのも、実験結果の分析を意識したものと思われる。
問題分析
大問数 | 4 |
---|---|
設問数 | 23 |
解答数 | 24 |
問題量
- 問題記載ページ数は昨年の23ページから5ページ増えて28ページ、また解答数も昨年の22から2増えて24となっているが、問題量としては難易度等を考慮すると試験時間に対してほぼ適量といえる。
出題分野・出題内容
- 第1問は物理の複数分野(熱力学、力学、電磁気、原子)からの小問集合形式による出題。
- 第2問は単振り子を題材にした探究活動を扱っており、時間測定における測定誤差や地球の自転が重力加速度の大きさに与える影響など、考察力も試されている。
- 第3問はAが熱力学分野からp-Vグラフの読み取りと熱力学第1法則、Bが波動分野から2つの波の重ね合わせに関する出題である。
- 第4問は磁場中を運動する導体棒に生じる誘導起電力とコンデンサー、コイル、抵抗を含む回路に関する出題である。
出題形式
- 大問をAとBに分けて、それぞれ異なる分野から出題する、昨年にはなかった形式が復活した。昨年と同様に、実験に対する考察力を試そうする意図は全体を通して感じられ、図やグラフ選択の問が昨年の1から6に増えている。
難易度(全体)
- 難易度はやや難化。昨年度に引き続き、会話文形式の設問は出題されず、実験やその結果について考察する問題が出題された。原子分野の知識が必須の出題が見られた。
第1問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 5 | 状態変化 | 標準 |
問2 | 5 | 万有引力 | 標準 |
問3 | 5 | 力の合成 | やや難 |
問4 | 5 | 荷電粒子の運動 | 標準 |
問5 | 5 | ブラッグ反射 | 標準 |
例年通りの小問集合。問1は、ボイル・シャルルの法則を用いればよい。問2は、重力の大きさを万有引力の大きさとして表し解けばよい。数値計算もあるが、有効数字1桁なので効率よく計算したい。問3は剛体における力の合成に関する問題。合力の大きさや向きだけでなく、作用点の位置まで要求されている。問4は、磁場が仕事をしないことがポイント。電場のみが存在するときは電子の速さは大きくなる。問5は原子分野からの出題。難易度そのものは平易であったが、原子分野の知識が必須であった。
第2問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
25 | 単振り子に関する探究活動 | 標準 |
第2問では力学から、単振り子に関する探究活動について出題された。問1、問2は振り子の周期を導いた経験があればとっかかり易いが、以降はその場である程度考える必要が出てくる。問3は、ストップウォッチを止めるのが遅れれば当然その分周期が長く見積もられることと、ストップウォッチの遅れが一定であれば、往復回数を増やせば遅れの影響が小さくなっていくことがポイント。問4は1周期の間に振り子は原点を何回通過するかを考える。問5は少し視点が変わり、地球上で重力加速度が変化する原理について考える問題。赤道では遠心力が万有引力と逆方向にはたらくため、重力加速度の大きさは小さくなる。
第3問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 13 | 気体の状態変化 | 標準 |
B | 12 | 波の式 | やや難 |
第3問では熱力学(A)と波の式(B)が出題された。問1は与えられた圧力-体積のグラフから気体のした仕事を求める問題。符号に気をつけること。問2は圧力-体積のグラフを温度-体積のグラフに描き換える問題。各過程で何が一定になっているかに着目しよう。問3は2つの異なる過程を比較する問題。穴埋めの誘導に乗って、熱力学の第一法則を考えればよい。次からは波動に関する問題。問4は平易で、与えられた変位の時間変化から振幅と振動数を読み取ればよい。問5はまず波の位相に変化がないことから候補を絞りたい。問6は問われ方に特徴があるが、誘導通りに解答しよう。距離の差は、時間の差に波の伝わる速さをかければよい。
第4問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
25 | 電磁誘導 | やや難 |
第4問では電磁誘導について出題された。問1は誘導起電力の公式とその向きについてわかっていればよいので平易。問2は、時間が経過するとコンデンサーの充電が進み、流れる電流が0に近づいていくのがポイント。流れる電流が0なら導体棒にはたらく力も0である。問3は回路全体のエネルギー収支を考える問題で、頻出。経験のある受験生も多かったと思われる。外力のした仕事についてはヒントが与えられている。問4はコンデンサーの放電に関する問題。電位の高低と導体棒にはたらく力の向きがわかればよい。問5と問6は、電流が時間とともに一定値に近づいていくのがポイント。電流が変化しないとき、コイルに生じる誘導起電力は0になる。また、力は電流に比例するため、力のグラフは図3に概形が等しくなる。問7はスイッチを閉じた直後でキルヒホッフの第二法則を考えればよい。
平均点(過去5年分)
年度 | 2024年度 | 2023年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 62.97点 | 63.39点 | 60.72点 | 62.36点 | 60.68点 |
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