化学
総評と分析
昨年度共通テストと比較して、思考力、計算力を問う設問が増加した一方で、知識問題は標準的なものが多かった。
全大問を通じて、見慣れない反応や、ややひねりのある計算問題が出題されたが、それ以外の知識問題は標準的であった。第5問(または第6問)は昨年よりも広範囲の分野にわたっての出題であった。
問題分析
大問数 | 大問数5 |
---|---|
設問数 | 設問数20 |
解答数 | 解答数34 |
問題量
- 昨年と比べ解答数が増加した。また、計算問題の数はやや増加したが、知識問題は基本〜標準レベルのものが多かった。全体として問題量は昨年並みであった。
出題分野・出題内容
- 第1問は物質の構成、物質の状態、第2問は物質の変化からの出題でいずれも理論分野であった。第3問は物質の変化、無機化学、第4問は有機化学からの出題であった。第5問(または第6問)は原油を題材とした総合問題であった。
- 第2問の問1で、難易度に影響はないものの、選択肢に「枕草子」の一文が用いられた。
- 第5問(または第6問)は、反応と量的関係・酸化還元・有機化学・化学反応とエネルギーなど、比較的幅広い分野からの出題であった。
出題形式
- 昨年に続き、第1問の問5、第2問の問4、第3問の問4、第4問の問4、第5問(または第6問)の問3など、比較的長文の問題を読み取り、関連する設問を複数配置する大問形式の問題が出題された。また、今年は答えの数値自体を解答させる設問が出題された。
- 新教育課程履修者は第5問を、旧教育課程履修者等は第5、6問のうち1問を選択する形式であった。
難易度(全体)
- 思考力、計算力が問われる手間のかかる計算問題も見られるが、知識問題のほとんどが基本〜標準レベルであるため、全体として難易度は昨年並である。
第1問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 3 | 結晶 | 易 |
問2 | 3 | 理想気体と実在気体 | 標準 |
問3 | 4 | 気体の溶解度 | 標準 |
問4 | 3 | コロイドの性質 | やや易 |
問5 | 7 | 溶液の性質 | 標準 |
物質の状態の分野からの出題。問2は理想気体と実在気体の差異と、実在気体が理想気体に近づく条件を問う問題だが、文章が長かった。問3は溶解量の変化から圧力を計算すればよいのだが、一見何をすればいいかが読み取りづらく、悩んだ受験生もいたのではないか。問4はコロイドの知識を正しく習得できていれば消去法でも解答可能である。問5aは、与えられたグラフが水の蒸気圧曲線で、考えるのは塩化ナトリウム水溶液の沸点であることに注意が必要だった。bは電解質水溶液であることに注意が必要だった。
第2問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 3 | 化学発光 | やや易 |
問2 | 3 | 電極反応の量的関係 | 標準 |
問3 | 4 | 電離平衡とpH | やや難 |
問4 | 10 | ハーバー・ボッシュ法の化学平衡と反応速度 | 標準 |
物質の変化の分野からの出題。問1は化学発光が化学反応によって生じるものと考えれば正答に気づけるだろう。問2はあまり見かけないニッケル・カドミウム電池を題材としているが、電極における反応の量的関係の計算の基本通りに考えればよい。問3の弱酸水溶液の体積とpHの関係は視点が少し珍しく、水素イオン濃度と電離定数の関係の近似式から考える必要があった。問4はハーバー・ボッシュ法に関連した反応速度や化学平衡の諸問題であるが、いずれも典型的な問題であった。
第3問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 3 | 遷移元素を含む物質の反応 | やや易 |
問2 | 3 | ケイ酸ナトリウム | 標準 |
問3 | 3 | 気体の生成と性質 | 標準 |
問4 | 11 | ヨウ素の製造 | 標準 |
無機物質の分野からの出題。問1・2は基本〜標準レベルの知識が問われた。問3は反応で生じる気体を空欄で与え、その性質を問う問題でやや珍しいが、いずれも典型的な反応であるため特に難しいものではなかった。問4のヨウ素をテーマとした出題は目新しく、bの反応式の係数決定に手間取りやすい。酸化還元反応であるため、電子のやりとりに着目すると係数aがすぐに決まることに気づけると早かった。cは与えられた数値から得られるのがヨウ素の物質量で、答えるのはヨウ化ナトリウムの濃度であることに注意が必要だった。
第4問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 3 | 酸素を含む有機化合物 | やや易 |
問2 | 4 | 有機化合物の構造決定 | 標準 |
問3 | 3 | 天然高分子化合物 | やや易 |
問4 | 10 | アセチレンの反応 | 標準 |
有機化学の分野からの出題。問1は基本的な知識が問われた。問2は教科書等には出てこない反応であるため、与えられた条件からしっかりと考える必要があった。問3は問1同様極めて基本的な知識が問われた。問4はアセチレンの反応から、ビニロンの合成までを考える問題で、a、bが標準的な知識の問題である一方、cのポリビニルブチラールの合成は目新しい。ただし、アセタール化された割合の計算は、ビニロンの合成における同様の問題とまったく同じように考えることができるため、見た目ほど難しくない。
第5問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 3 | 原油の分留の留出物 | 標準 |
問2 | 4 | ナイロン6の合成 | 標準 |
問3 | 13 | バナジウムに関する小問集合 | 標準 |
原油の精製と、そこから得られるナフサやバナジウムを題材とした総合問題。第6問とは問3cのみが異なる。問1の原油の分留における温度ごとの生成物は、近年では出題が見られなかったこともあり、覚えていない受験生も多かったのではないかと思われる。問2はそれぞれの化合物の反応前後から物質の推測が可能である。問3は出題分野が広いが、a、bは基本的な知識問題であり、cの反応エンタルピーの計算も必要な生成エンタルピーがすべて与えられているため、それほど難しくない。dも量的関係が単純であるため、計算は平易である。
第6問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 3 | 原油の分留の留出物 | 標準 |
問2 | 4 | ナイロン6の合成 | 標準 |
問3 | 13 | バナジウムに関する小問集合 | 標準 |
原油の精製と、そこから得られるナフサやバナジウムを題材とした総合問題。第5問とは問3cのみが異なる。問1の原油の分留における温度ごとの生成物は、近年では出題が見られなかったこともあり、覚えていない受験生も多かったのではないかと思われる。問2はそれぞれの化合物の反応前後から物質の推測が可能である。問3は出題分野が広いが、a、bは基本的な知識問題であり、cの反応熱の計算も必要な生成熱がすべて与えられているため、それほど難しくない。dも量的関係が単純であるため、計算は平易である。
平均点(過去5年分)
年度 | 2024年度 | 2023年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 54.77点 | 54.01点 | 47.63点 | 57.59点 | 54.79点 |
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