数学Ⅱ,数学B,数学C

総評と分析

昨年の「数学Ⅱ・数学B」と比較して試験時間が10分延長されたが、問題量は適切である。全体として、大問と小問ごとの難易度の差が小さい。


新課程初年度ということもあり、取り組みやすい問題が多かった。ただし、第2問のように問題文をしっかりと読んで丁寧に考察しなければならない問題も引き続き見られた。数学Cでは、ベクトル・複素数平面から出題された一方で2次曲線からの出題はなかった。

問題分析

大問数 7
設問数 24
解答数 110

問題量

  • 昨年度と同様に、必答問題はいずれも比較的取り組みやすい。選択問題については、問題ごとの難易度の差はあまり見られなかった。ただし、昨年度と比べて3題中2題選択から4題中3題選択へと変更になったのでその分だけ問題量が増加した。

出題分野・出題内容

  • 第1問は三角関数からの出題で、誘導にしたがって三角方程式の解を求める問題である。(1)の誘導が理解できなくても、(2)は和(差)を積に直す公式を用いて解くことができる。
  • 第2問は指数・対数関数からの出題で、池に生息する水草の量の増え方を常用対数を用いて考察する問題である。題意を読み取るのに手間取った受験生が多かったと思われる。
  • 第3問は微分法・積分法からの出題である。同じ導関数をもつ2つの3次関数について、極値や増減、グラフなどを考察していく問題である。全体として計算はほとんど必要なかった。
  • 第4問は数列からの出題である。座標平面上において直線や曲線によって囲まれた図形の内部にある格子点の個数を求める問題である。いずれの設問も座標軸に平行な直線上の格子点を数え上げて和を求めればよい。2次試験対策をきちんとしている者が有利であっただろう。
  • 第5問は確率分布と統計的な推測からの出題である。ある地域で栽培されるレモンの重さを題材とした問題である。正規分布および二項分布による近似や、母平均に対する信頼区間を考える定番の内容が続いた。一方で新課程からの内容である仮設検定についての知識も問われたが、いずれも基本的である。
  • 第6問は空間ベクトルからの出題である。単位球面上に2定点があり、第3の点をとったときに3点が正三角形になる条件を考察する問題である。ベクトルの知識を活用するのは前半だけであり、後半は実数の存在条件を考える設問でベクトルとはあまり関係がなかった。
  • 第7問は複素数平面からの出題である。複素数の計算や垂直条件、軌跡など基本的な内容が理解できていれば特に難しいところはなかった。(3)の後半についても、前半の結果を用いれば、改めて軌跡を求めるための計算をし直す必要はない。

出題形式

  • 答えを選択肢から選ぶ問題が第1問で3、第2問で4、第3問で10、第4問で5、第5問で7、第6問で8、第7問で8であり、それ以外は数値を求めさせる問題である。

難易度(全体)

  • 新課程初年度であるからか、昨年同様取り組みやすい。分量は昨年よりも多いが適切である。一部に、問題設定を読み取るのに苦戦する箇所がある。必答問題である第1~第3問は比較的取り組みやすいが、第2問は試験場では焦る可能性が高い。かつては、選択問題は手間がかかるケースが多かったのだが、2年前からは難易度が控えめとなり、本年度も同様である。昨年と異なり、全体として大問・小問ごとの難易の差が小さい。選択肢を選ぶ設問が頻繁に登場するのも、昨年と同様である。

第1問 (15点満点)

配点 出題内容 難易度
15 三角関数 標準

昨年までは、三角関数と指数関数・対数関数、図形と式の中からが2題出題されるケースがほとんどであったが、新課程になり、三角関数のみで大問1題となった。(1)(ⅰ)非常に基本的である。(ⅱ)も図を描けば非常に易しい。(ⅲ)図を描けばα+βの値も難なく求まるのだが、おそらくこの類の問題に苦手意識を抱く層が実際には多く、焦ったものと思われる。落ち着いて図を描こう。(2)も(1)(ⅲ)と同じ作業を行うだけなのだが、マークシート試験の特性上、答えの個数が判っているので、上位層は現実には場合分けなど行っていないだろう。計算はかなり楽である。

第2問 (15点満点)

配点 出題内容 難易度
15 指数関数・対数関数 標準

新課程となり、指数関数・対数関数は大問2へ移動した。本年度のセットでは、この問題に苦戦した受験者が最も多かったものと思われる。数学的には、特に難しい要素は無いのだが、題意をくみ取るのに時間を要する受験生が多いだろう。試験場で焦って読むと、題意が把握しにくい。常用対数表を読み取らせるのは非常に珍しい。(1)非常に易しい。文章を読んで、対数を取るだけである。しかし、ここで早速、常用対数表の読み取りが登場する。(2)けっして難しくはない。題意の把握だけが問題となろう。aの常用対数を求めるところが若干、計算が面倒であるので、注意深く計算しよう。最後の空欄では、再度、常用対数が登場する。

第3問 (22点満点)

配点 出題内容 難易度
22 微分法・積分法 標準

微積分が第2問から第3問へと移動して、配点も30点→22点とかなり縮小した。(1)非常に基本的なのだが、微分させて、再度積分させるので、困惑した受験生が意外に多かったであろう。(2)(ⅰ)も基本的であるが、焦ると符号変化を誤りやすいので落ち着いて考えたい。(ⅱ)も誘導に従っていけば、難しい要素は無いのだが、どの区間を積分した関数なのか、は盲点だったかもしれない。最後の2つの空欄も図を描けば、間違えにくい。全体を通して、計算は殆ど必要ない。

第4問 (16点満点)

配点 出題内容 難易度
16 数列 標準

このところ、漸化式の出題が続いていたのだが、新課程初年度は漸化式が全く出題されなかった。また、文章題的な要素もない。格子点をテーマにした問題であり、取り組みやすい。しかし、格子点というテーマにアレルギー反応を示す受験生が多いので、焦った者もいるだろう。格子点では面倒な入試問題が多い中、本問題は面倒な要素もない。(1)(2)(3)すべてが独立している。(1)基本的な等差数列の問題である。等差数列の和の計算も含めて、完答したい。(2)対数関数での格子点の個数の問題である。こちらも易しい。累乗の入った数列の和の計算も易しい。(3)放物線上での格子点の個数の設問である。本問では恒等式が現れるが、展開せず、適当な値を代入すること。あるいは、xの値がn、n-1の値の時の格子点の個数に着目して引き算を行う。

第5問 (16点満点)

配点 出題内容 難易度
16 確率分布と統計的な推測 標準

レモンの重さの分布を題材に、信頼区間・仮説検定を考える問題である。昨年度と比べると、基本手順に従えば解答できる部分が多くなった印象である。(1)基本事項で、計算ミスする余地もほとんどない。確実に得点したい。(2)nの最小値を求めるときは1.96 = 2 - 0.04と考えると計算しやすい。(3)平均についていくつかの値が並ぶが、110(g)は帰無仮説適用時の「理論値」、108.2(g)は「測定値」と、しっかり区別して考えたい。

第6問 (16点満点)

配点 出題内容 難易度
16 空間ベクトル 標準

本年度も昨年度と同様、空間ベクトルから出題された。球面がいきなり登場するので、見た目上は威圧感があるが、見た目ほどに難しくないのも特徴である。(1)誘導に従い、内積計算を行う。(2)(ⅰ)aが具体的な値として与えられているので、計算するのみである。点Cの個数も悩む要素は無いだろう。(3)やはり誘導に従って計算するのみであるが、若干の計算を要するので、工夫して計算することである。最後は2次不等式を解く必要がある。

第7問 (16点満点)

配点 出題内容 難易度
16 複素数平面 やや易

新課程で新たに追加された「複素数平面」「平面上の曲線」の単元の問題であるが、本年度は複素数平面のみの出題となった。センター試験であった頃から20年ぶりの出題であるが、初年度だからか、かなり取り組みやすく、計算も楽である。定番的な内容に終始している。(1)複素数の基本的な計算である。(2)純虚数のおなじみの性質を答える、こちらも基本的な内容である。(3)軌跡を求める問題であるが、(ⅰ)おなじみの内容であるうえ、計算方法まで明示されていて、至りつくせりである。(ⅱ)(ⅲ)も(ⅰ)の結果を用いれば、軌跡を計算しなおす必要が全くなく、易しい。全体を通して、計算量はかなり少ない。

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