地学

総評と分析

図表の読み取りと考察問題が大半を占めた。走向が東西でも南北でもない地質図問題が2題出題された。


図表の読み取り問題が4分の3を占め、数値を扱う力や考察力を問う問題が多かった。図表からの数値や大小を読み取る問題が多く、正確な知識と科学的思考力が求められる。

問題分析

大問数 昨年と変わらず5
設問数 昨年に比べ1減の26
解答数 昨年と変わらず27

問題量

  • ページ数は昨年と変化なし、各問題の文章量は昨年並み。

出題分野・出題内容

  • 例年通り第1問は全分野の内容が分野横断的に出題され、第2問は地球、第3問は岩石・鉱物と地質・地史、第4問は大気・海洋、第5問は宇宙から出題された。
  • 全体の4分の3が図表問題で、数値の読み取りと高度な考察を要する読図問題も複数あった。 
  • 図表から数値や大小関係を読み取る問題が非常に多く、計算は複雑ではないが、地学現象に関する正確な理解と考察が要求されていた。

出題形式

  • 6択形式の問題が6題、5択形式の問題が1題、それ以外は4択問題で昨年と比べ5択以上の選択肢の問題が増加した。

難易度(全体)

  • 図表から数値や大小関係を読み取って考察する問題が増加した一方で、基本的な知識のみで解ける問題も増加した。慎重な解答が求められるが難問はなく、全体の難易度はやや易化したと思われる。

第1問 (20点満点)

配点 出題内容 難易度
20 グラフや図を使った地学現象の可視化 標準

問1は海洋底の拡大速度の比を、問2は銀河の距離を求める読図問題で、ともにデータのプロットから比例関係のグラフを描けば正答できる。問3は与えられた表から水に飽和時の融解曲線が点Aより下を通ることと島弧下でのマグマ発生の知識から、問4は同一海域では表層混合層の水温のみ季節変化するという知識から正答できる。問5のルートマップは走向が東西でも南北でもないN45°W方向なので難しいが、N45°W方向に地点X、c、eが一直線に並んでいることと、地点X、eが同一の標高にあることがわかれば正答できる。

第2問 (15点満点)

配点 出題内容 難易度
15 アイソスタシー、地磁気、プレートと火山、地震波の初動 標準

問1は氷床融解後の地殻の隆起についての知識から、問2はオーロラが南北半球両方にできることと磁気異常の縞模様についての知識から正答できる。問3は海溝で沈み込むプレートによる島弧の火山フロントの成因を理解していれば、四国地方ではフィリピン海プレートの上面が浅すぎ、中国地方でようやく深さ100 kmに達することに気付けるだろう。問4は横ずれ断層における地震波の初動分布の読図問題で、断層をはさんだ向かい側の岩盤が左向きに動いているのは左横ずれ断層である。

第3問 (25点満点)

配点 出題内容 難易度
A 11 鉱物の性質、マグマの組成と火山地形、多形鉱物 やや易
B 8 示相化石と示準化石、地層が堆積した水深の推定 やや易
C 6 向斜構造、地層の新旧 やや難

Aの問1は造岩鉱物の分類図と分類基準の照合問題、問2は火山活動に関する空欄補充問題で、いずれも基本的な知識問題である。問3は沈み込み帯の断面図から2点の温度と深さを読み取って、多形鉱物の相図上にプロットすれば正答できる。Bの問4は示相化石の定義と第四紀の示準化石についての知識問題、問5は二枚貝A〜Dの生息深度を重ね合わせて地点Xの堆積環境を推定する問題である。Cの問6は地質図から読み取れることを2つ選ぶ問題で、北東-南西方向の向斜軸を読み取れるかが鍵である。

第4問 (21点満点)

配点 出題内容 難易度
A 7 水銀柱と気圧、気温の鉛直分布 標準
B 7 雲粒の形成、飽和水蒸気圧と氷晶の成長 標準
C 7 西岸強化と地衡流、黒潮の蛇行と海面高度 標準

Aの問1は気圧の変化による水銀柱の高さ変化の考察問題、問2は地上付近と成層圏上部における気温上昇の原因についての知識問題である。Bの問3は凝結核や氷晶核をつくるエーロゾルとして適切でないものを選ぶ問題、問4は氷晶雨の成因についての空欄補充問題である。Cの問5は黒潮の成因についての空欄補充問題、問6は黒潮の蛇行部分における海面高度の模式図を選ぶ問題である。全体的に基本的な知識を正確に理解しているかが問われている。

第5問 (19点満点)

配点 出題内容 難易度
A 11 惑星の視運動、惑星の性質 標準
B 8 HR図、恒星の進化、恒星の距離 やや難

Aの問1は太陽との位置関係が合でも衝でもないことから順行であり、視運動が小さいことから惑星Aは外惑星だと判断できる。問2は、図1の視運動から読み取れるのは公転面の一致のみである。問3は地球型惑星と木星型惑星の構造についての知識のみで正答できる。Bの問4は、太陽より10等級小さい主系列星Pの光度は太陽の1万倍であり、質量光度関係から太陽の10倍程度の質量をもつので、将来は超新星爆発を起こす。問5は、年周視差0.10″に相当する距離は10パーセクなので、絶対等級が見かけの等級と等しくなる。

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