物理

総評と分析

会話形式の出題がなくなったが、昨年に引き続き、考察力を試す出題が目立った。


まず、会話形式の出題がなくなったのが目を引く。原子分野からの出題は昨年と同様に第1問の小問集合の中で出題された。また、実験および実験データの分析など、探究活動を意識したと思われる出題が目立った。

問題分析

大問数 昨年と変わらず4。
設問数 昨年と変わらず20。
解答数 昨年から4減少して22。

問題量

  • 問題記載ページは昨年の28ページから5ページ減少して23ページとなっている。やや多かった昨年に比べて適量になった印象であるが、1ページあたりの情報量や読み取る必要のある文章量は増えている。

出題分野・出題内容

  • 第1問は物理の複数分野(力学、熱力学、波動、電磁気、原子)からの小問集合形式による出題。
  • 第2問はペットボトルロケットに関する探究の過程を通して、気体がした仕事、運動量保存則、力学的エネルギー保存則などの理解、および物理的な考察力を試している。多くの情報が与えられていて、用いる情報を探すのが難しい。
  • 第3問は弦の固有振動に関する探究活動を扱っており、グラフの読み取り、実験結果の分析など考察力が求められている。ちなみに、この問題で扱っている実験は2021年第2日程の第3問とほぼ同じである。
  • 第4問は等電位線と電場・電流の関係、導体紙の抵抗率など、電気分野に関する物理的な考察力をみる出題である。

出題形式

  • 大問をAとBに分けて異なる項目からの出題はなく、ひとつながりの問題で幅広い項目を扱っている。実験や実験データの分析など、探究活動を意識した出題が多く、しっかりした物理の実力がないと対応が難しいと思われる。

難易度(全体)

  • 難易度は昨年度並。会話文形式の出題は消滅したが、知識を複合的に用いて実験やその結果について考察する問題が引き続き多く出題された。また、昨年同様原子分野からの出題も見られた。

第1問 (25点満点)

配点 出題内容 難易度
問1 5 力のモーメント やや易
問2 5 分子運動論 やや難
問3 5 光の屈折・全反射 標準
問4 5 荷電粒子の運動 やや易
問5 5 原子核反応 標準

昨年同様、小問集合であった。問1は力のモーメントを考える問題で幸い三角形の重心の位置が与えられているので難しくない。問2は原子分野のようにも見えるが熱力学(分子運動論)からの問題で、運動エネルギーの平均が絶対温度に比例するという知識が必要。問3は光の屈折と全反射に関する問題で、屈折率の大小関係から水とガラスの境界では全反射は起こらない。問4は磁場中を運動する荷電粒子に関する問題で、粒子の速度の磁場に垂直な成分だけがローレンツ力に寄与することがわかっていれば容易。問5は原子核反応の問題で、原子核反応前後のエネルギー収支と半減期について問われた。原子分野を敬遠せずにしっかりと学習していれば難しくない。

第2問 (25点満点)

配点 出題内容 難易度
25 ペットボトルロケットに関する探究 やや難

運動量やエネルギーに関する知識を用いて、ペットボトルロケットについて考察する問題。全体的に情報量が多く、やや難しいが上手に誘導に乗っていきたい。問1は液面の変位に着目する問題。下がった液面の分だけノズルから出ていく。問2は密度と気体がする仕事の定義がわかっていればいずれも容易。問3は水の噴出する速さを求める問題。気体のする仕事は力学的なものなので、運動エネルギーになると考えられる。問4は全運動量を答えるだけの問題で、符号に惑わされないようにしたい。問5は水の噴出による推進力と重力を比べる問題。いろいろな考え方ができるが、例えば運動量と力積の関係を用いて噴出する水がロケットに及ぼす力を求めて重力と比べればよい。

第3問 (25点満点)

配点 出題内容 難易度
25 弦の振動 標準

弦の振動に関する問題。問1は電流が受ける力の方向と定常波についての問題(交流電源とあるが、電磁気の知識が必要なのはここだけ)。また、中心部分は力を受けて大きく動くので腹になる。問2は定常波の波長を求める問題。こまからこままでの距離が何波長分か、図を描いて考えよう。問3も問2と同様にこまからこままでの距離が何波長分かを考え、波の基本式を使って振動数と腹の数の関係が導ければよい。問4は振動数と金属線を引く力の関係を考える問題。図を素直に読み、直線となっているものを選ぼう。問5は振動数と金属線の直径の関係を考える問題。こちらも素直に表を読もう。なお問4と問5は、金属線を伝わる波の速さが張力の平方根に比例し、線密度の平方根に反比例することを知っていればデータは確認用に使える。

第4問 (25点満点)

配点 出題内容 難易度
25 電場と電位・電流 標準

電場と電位、電流に関する問題。問1と問2は等電位線と電気力線についての問題。電気力線が正電荷から現れ負電荷に吸い込まれること、等電位線が電気力線に垂直なこと、点電荷の近くで電場が強い、つまり等電位線の間隔が狭いことがポイント。問3は与えられた図を眺めて答える問題。こちらも等電位線と電気力線が垂直なことと、電場の方向に電流が流れることがポイントであった(今の場合電流とは、電場から力を受けて流れる電荷の流れである)。問4は与えられたグラフから電場の強さを求める問題。電場の強さはグラフの傾きで与えられる(V/m という電場の単位に注目)。単位の換算に注意。問5は抵抗率を求める問題で、電位差を電場で表し、中心付近の狭い領域にオームの法則を適用すればよい。抵抗率の定義も当然必要になってくる。

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