国語
総評と分析
昨年までの「国語」と比べて、評論・小説は複数のテキストが用いられず、センター試験時代の形式に近かった。新しく追加された第3問は、文章や図表などの複数の資料を横断的に読み取ることを求める新傾向の問題が出題された。なお、大問全体を通じて選択肢の標準的な数が5つから4つに減少した。
第1問(現代文)はオーソドックスな評論文の問題だった。第2問(現代文)は、語句の意味を問う問題や複数資料を用いた問題がなくなった。今年度新たに追加された第3問(現代文)は、2022試作問題と同様、生徒の言語活動に着目した問題が出題された。第4問(古文)は、本文として2つの文章が提示され、それらを読み比べるという従来通りの形式であった。第5問(漢文)は、本文がやや増加したものの、出題の形式や設問構成はおおむね従来通りであった。
問題分析
大問数 | 5 |
---|---|
設問数 | 25 |
解答数 | 38 |
問題量
- 第1問(現代文)は約3800字で昨年より100字程度減少。(以下全て「昨年」は2024本試験「国語」)
- 第2問(現代文)は約4300字で昨年より1200字程度増加。
- 第3問(現代文)は約700字の文章と、グラフ3つを含む【資料I】、文章の【資料II】、グラフ1つを含む【資料III】。
- 第4問(古文)は、【文章I】は約600字、【文章II】は約400字で、合計量は昨年より200字程度減少。
- 第5問(漢文)は、【文章I】は107字、【文章II】は92字で、合計量は昨年より11字増加。
出題分野・出題内容
- 近代以降の文章が昨年より1題増え3題、古文1題、漢文1題の構成。
- 第1問(現代文)は高岡文章「観光は『見る』ことである/ない――『観光のまなざし』をめぐって」からの出題。
- 第2問(現代文)は蜂飼耳「繭の遊戯」からの出題。
- 第3問(現代文)は、生徒作成の文章と、外来語の言い換えに関するグラフ3つを含む【資料I】と、外来語の言い換えに関する文章の【資料II】と、外来語に関するグラフ1つを含む【資料III】からの出題。
- 第4問(古文)は、『在明の別』(【文章I】)及び『源氏物語』若菜下の巻(【文章II】)からの出題。
- 第5問(漢文)は『論語』・皆川淇園『論語繹解』(以上【文章I】)及び田中履堂『学資談』(【文章II】)からの出題。
出題形式
- 第1問(現代文)は漢字問題と傍線部説明問題からなり、昨年まで出題されていた生徒同士の対話や生徒作成の文章は出題されなかった。
- 第2問(現代文)は語句の意味を問う問題が出題されなかったことに加え、近年見られていた複数の資料を用いた問題が姿を消し、登場人物の様子や心情の変化を読み解く問題を中心に出題された。
- 第3問(現代文)は資料を踏まえて、生徒作成の文章に理由や根拠を加える問題や、生徒作成の文章を推敲する問題が出された。
- 第4問(古文)は、生徒の会話文を通して、2つの文章の相違点や、内容理解を問う設問が出された。また、文法事項のみを問う設問が、共通テストとしては初めて出題された。
- 第5問(漢文)は、語句の意味や傍線部解釈といったオーソドックスな設問に加え、複数文章それぞれの筆者の考えを読み取って比較する設問が出された。
難易度(全体)
- 昨年と比べて同程度。評論、小説、古文、漢文はいずれも昨年並みで、新たに追加された第3問も総じて標準レベル。
第1問 (45点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 10 | 漢字の識別問題 | やや易 |
問2 | 7 | 内容説明問題 | やや易 |
問3 | 7 | 内容説明問題 | やや易 |
問4 | 7 | 理由説明問題 | 標準 |
問5 | 7 | 表現説明問題 | やや難 |
問6 | 7 | 内容把握問題 | 標準 |
出典は高岡文章「観光は『見る』ことである/ない――『観光のまなざし』をめぐって」による。昨年と同様、評論文1題が課されたが、昨年まで見られた生徒同士の対話や生徒作成の文章を用いた設問はなかった。問1は昨年と同形式の漢字識別問題が5題、問2~問6は傍線部の内容や表現について問う問題。問題文を把握できていれば選択肢の正誤を判別しやすい問題が多かった。
第2問 (45点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 6 | 心情説明問題 | 標準 |
問2 | 6 | 心情説明問題 | 標準 |
問3 | 6 | 人物像把握問題 | やや易 |
問4 | 7 | 心情説明問題 | 標準 |
問5 | 7 | 表現理解問題 | やや易 |
問6 | 6 | 心情説明問題 | やや易 |
問7 | 7 | 心情説明問題 | やや難 |
出典は蜂飼耳「繭の遊戯」(2005年発表)。昨年同様、小説の一節からの出題である。昨年から設問数に変化はなかったが、枝問の数が減り解答数は3減少。語句の意味を問う問題や複数の資料を用いた問題が姿を消し、登場人物の様子や心情、またその変化を問う設問が見られた。一部紛らわしい選択肢もあったが、総じて正解は選びやすかったと思われる。問7では冒頭と結末部分それぞれの「わたし」の心境をとらえる必要があり、丁寧な読解が求められた。
第3問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 4 | 資料を踏まえて生徒作成の文章に理由を加える問題 | やや易 |
問2 | 5 | 生徒作成の文章の表現を修正する問題 | やや易 |
問3 | 11 | 生徒作成の文章を推敲する問題 | やや難 |
今年度新たに追加された大問である。題材は生徒作成の文章と外来語に関する資料3つ。資料にはグラフと文章が含まれており、異なる形式の複数の資料を用いた問題が出題された。設問は、生徒作成の文章に理由を加えるものや、生徒作成の文章を推敲するものが出された。生徒作成の文章や資料の内容を把握できれば正解を選びやすい設問が多かったが、問3の(ii)は設問意図の把握に苦労した受験生もいただろう。
第4問 (45点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 15 | 傍線部の解釈問題 | やや易 |
問2 | 7 | 敬語の説明問題 | 標準 |
問3 | 23 | 生徒の会話による複数文章の内容理解問題 | 標準 |
平安時代末期の擬古物語『在明の別』と、その場面の下敷きとなった『源氏物語』若菜下の巻からの出題。22年度本試以来3年ぶりに、本文に2つの文章が提示される形式だった。問2は従来の語句と表現を絡めた設問ではなく、敬語の理解のみを問う文法問題となった。問3は生徒の話し合いの中にある空欄を補充する形で、文章の内容理解を問う問題。文章Iと文章IIを読み比べる会話の内容を、本文を理解する手助けとして活用することができれば、正答を導くのは難しくなかった。
第5問 (45点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 12 | 語句の意味問題 | 標準 |
問2 | 7 | 理由説明問題 | 標準 |
問3 | 6 | 傍線部解釈問題 | やや易 |
問4 | 6 | 返り点と書き下し文の問題 | やや難 |
問5 | 6 | 同訓の漢字の用法の問題 | 標準 |
問6 | 8 | 複数資料による内容理解問題 | 標準 |
本文は、『論語』の一節とそれに対する江戸時代の人物による注釈、および注釈者の弟子による文章から成り、共通テスト本試験では初めて日本人の漢文が含まれた。問1~4は、語句の知識や傍線部の理解を問う例年通りの設問。問5は、「また」と読む2つの漢字について、同じ用法の「また」を含む日本語の文を選ぶ、目新しい形式。問6は、2つの文章の考え方の相違を読み取ることが求められた。本文に難解な表現は少なく、設問形式もおおむね標準的であった。
平均点(過去5年分)
年度 | 2024年度 | 2023年度 | 2022年度 | 2021年度 | 2020年度 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 116.5点 | 105.74点 | 110.26点 | 117.51点 | 119.33点 |
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